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東和薬品のマイバスタンは一〇〇円九〇銭、沢井製薬のプラバチンが七一円四〇銭

血中のコレステロール値が高ければ動脈硬化が起き、それによって心筋梗塞脳梗塞が起こりやすくなる。とすれば、コレステロール値を下げれば、心筋梗塞脳梗塞が起こりにくい、というのは論理的に当然。

 つまり、メバロチンを使えば心筋梗塞脳梗塞を防ぐことができる、というのも論理的帰結。しかし、この段階ではあくまで仮説にすぎない。

 三共では〇五年末にこの仮説を裏付ける長期臨床試験の結果を発表した。

 高コレステロール血症患者四〇~七〇歳の約八〇〇〇人を対象に、「食事療法のみを行うグループ」と「食事療法とメバロチンを併用するグループ」とに分け、それぞれ平均五年以上の治療を行ったもの。メバロチンを併用したグループは、

 ①心筋梗塞狭心症などの冠状動脈疾患の発症率を一二%抑制できた
 ②冠状動脈疾患に脳梗塞を加えた動脈硬化由来の疾患の発症率を三〇%抑制できた
 ③副作用などの有害事象発生率には差がなかった

 という結果を得た。つまり、メバロチンを使えば安全で動脈硬化や脳梗塞などを三割は抑えられる 

というデータが明確にそろったのである。

 このデータを持って三共のMRたちは病院の医師たちにアプローチする。ジェネリックに切り替えようとしている医師でも、このデータを見せられると、なかなか踏み切れず、引き留められてしまうのだ。

 それは日本人を対象にした八〇〇〇人規模の大がかりな臨床試験のデータが他にないからだ。ジェネリック各社も、同種の医薬品を扱っている新薬メーカーのMRも同様のデータは持っているが、これほど大がかりでもなく、また海外のデータが中心だった。より確実に効果や安全性が確認できるデータとしては稀有のものだったから、医師側もこれを無視してジェネリックに切り替えるにはなかなかの勇気がいる。

値引き合戦では勝てないジェネリック

 もちろんデータを中心とする営業だけではない。低価格という鮮明な武器を持つジェネリックに対抗するためには、値引き、リベートという手段も欠かすことができない。

 一〇パーセント程度の値引きはもちろん、二〇パーセントの値引きを行うケースもあったという。

 病院側にとっては医薬品の薬価と、実際の納入価格の差が重要な収益源になる構図は、過去も現在も変わらない。薬価は国が病院に支払う価格であらかじめ決まっている。それをいかに安く仕入れるかの差額が薬価差益で、当然大量の薬を使えば安く仕入れられるし、長い取引実績や信頼関係がものをいうことも多い。この段階は純粋な商行為なのだ。

 商行為である以上、ジェネリック側かより大きな値引きを提示すれば、先発薬からの切り替えが容赦なく行われる。これまでは取引実績や信頼関係という目に見えない要素がジェネリックへの一気の切り替えを阻害してきたのだが、行政が後押しし、経営が苦しい病院側もそうは言っていられない事情がある。

 ただ先発薬に有利なのは、薬価が高いため、値引率は小さくでも値引き額が大きくなること。

 たとえばメバロチンー〇ミリグラムが一五〇円として、三割値引きすれば病院側が受け取る薬価差益は四五円になる。

 これに対してジェネリック側のA社の薬価が九〇円だとする。メバロチンの場合と同じ差益を提示するには、実に五割の値下げをしなければならない。薬九層倍といわれ、利益率の高いことでは群を抜くとはいえ、常時これだけの値下げを強要されるのでは儲けにならない。

 メバロチンの一〇ミリグラムで一三一円四〇銭とは先に述べたが、大手ジェネリック東和薬品のマイバスタンは一〇〇円九〇銭、沢井製薬のプラバチンが七一円四〇銭、日医工のメバンが六五円四〇銭と、この薬価の差でジェネリックの特徴をアピールしてきたものの、実際の値引き合戦となると、ここからさらに大幅値引きとなるのだから、各社とも厳しい。