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ジェネリックが普及してこなかった要因

 なぜ安定供給ができないかというと、ジェネリック各社が中小企業の域を出ないからである。

 大手どころで東和薬品が売上げ二四二億円、沢井製薬が二六六億円、日医工が二四三億円、大洋薬品工業が二九一億円という中堅規模(〇五年度)。しかも、ここ数年右肩上がりの高成長を重ねてきてのこの数字である。新薬メーカとは比べれば、とても太刀打ちできないというのは先に述べた。

 しかも、たとえば沢井製薬ジェネリック取り扱い点数は約四〇〇品目と多い。一つの医薬品当たりの売上げは六六〇〇万円にすぎないのだ。

 これではそうそうコストもかけていられないというのも事実。不採算のジェネリックからはとっとと撤退して、好採算のものに集中する、あるいは新しいジェネリックに着手するというのが中小企業としての処世術であることは間違いない。

 同じ意味で、この程度の企業であれば生産体制も余力を持てない。現在ある生産ラインをフルに活用して、複数の医薬品を生産する。新規の投資でラインを増強するなどという選択肢はなかった(最近は違う。各社とも積極的な設備投資を重ね、生産能力の増強に取り組んでいた。品目数は多く、ラインは少ないとなれば、生産は売れ筋に特化せざるをえず、さほど売れない医薬品はそれこそ売り切れごめんとならざるをえない。

 利益面でも営業利益はどの社もおおむね一〇パーセント前後だった。

 現在は好調ぶりを映して、売上高営業利益率沢井製薬で一六・ニパーセント、束和薬品で九・九パーセント、日医工で一〇・九パーセントと高水準の利益を確保しているが、ジェネリックという劇的に収益改善するわけではない分野が中心ではこのあたりが限界水準で、なかなか冒険できないでいた。

 まして、営業面では大幅に値下げして納入しなければ、医療機関はジェネリックを採用してくれない。

 薬価と実際の納入価格の差が差益として病院側の収益源となっているため、薬価の高い先発薬に対抗するためには、より大幅な値下げを提示しなければ使ってくれない。病院側も陰に陽に要求してくるわけだ。先発薬が一割の値引きでも、同じ差益を提供するためにはジェネリックは三割もの値引きをしなければならないことも多い。

 その営業面での構造的な要因が、恒常的にジェネリック会社の利益を圧迫する。企業規模が小さいだけに、儲かるジェネリックに集中し、利益を出さねばならない。

 こうした理由から経営判断も守りに偏向せざるを得ない。医薬品メーカーの使命としての患者の命である薬の安定供給を犠牲にしなければならないことも起こってくる。

 もちろん、先発薬メーカーがその責任から安定供給は保証しているから、患者には実害はないのだが、やはり医療機関としては安定供給に難があるところとの取引は二の足を踏むのは仕方ないし、こうした状況が長く続いたため、どうしてもジェネリックメーカーは軽んじられる。まともな取引相手とは見られず、特殊なケースでの取引に限定される。

 これが今までジェネリックが普及してこなかった内在的要因の一つ。


ジェネリック各社の業容の小ささが阻害した。

 また、社会的認知度を高めると一目に言っても、それは業界全体が足並みをそろえなければならない。少なくとも大手といわれるメーカーがその共通認識のもと、系統だった認知度向上の施策を打って行かねばならない。

 しかし、現実はジェネリックメーカー同士の競争が激しく、足並みがそろわない。

 最近ようやく大手三社が互いのジェネリックのOEM供給や共回開発での提携に合意したが、それまで大手はほとんど別個の考え方に基づいて活動していた。小規模企業同士で激しく競争していたのである。

 しかも、医薬工業協議会というジェネリックの業界団体があったが、沢井製薬が〇二年、日本ジェネリック医薬品研究会を設立して、事実上業界団体が分裂してしまった。医薬協を牛耳る東和薬品との覇権争いの結果といわれる。とても対先発薬で一つにまとまるという状況ではない。

 先発薬対ジェネリックという図式ではなく、先発薬ははるか先を行き、だんごになったジェネリック同士の競争になっていたのだから、先発薬のシェアを奪うどころか、自分たちで食い合いをしていたのだ。業界あげてのイメージアップどころか、自分の売上げを守るのに汲々としていたのだから、長い間、新薬メーカーがジェネリックを軽視していたのも当然のことだった。