医薬翻訳サービス

薬理学、生化学、統計学に精通した翻訳士が対応いたします

中国の巨大な医薬市場について

現在もっとも注目されている市場が中国市場である。


 市場そのものは約一兆円と日米欧に及ばず世界でも九位クラスの市場だが、その潜在力は圧倒的に高い。

 一二億九九八八万人(〇四年)という巨大な人口を抱える中国の消費市場は、医薬品に限らず、あらゆる産業にとって今後の主力市場になっていく。

 医薬品市場については、毎年二〇パーセント以上の伸びを見せている。基本的に中国国内の医療保険加入者は大都市部の一部エリートに限定されているが、これが順次、下まで降りてくるし、地域的な広がりも見せてくるだろうから、当面の間、この急成長は続くことになる。

 日本は伸びどころか縮減、欧米もこれはどの伸びを見せることはない。それだけでなく、日米欧の医薬品業界の競争の激しさを考えれば、無人の荒野に等しい中国市場になんとか足がかりを築こうとするのは、企業として当然の戦略。

 中国では現地に製造工場を持って生産するか、現地の資本と合弁会社を作る、あるいは現地の法人を介する形でなければ、医薬品は販売できない。医薬品に限らずどの分野でも同しで、国内産業を保護育成する国家的な方針がある。

 そのため、日本の医薬品メーカーの現地生産が活発化している。

 たとえば、アステラス製薬免疫抑制剤「プログラフ」。臓器移植などの拒否反応を抑えるのに有効で、中国でも需要が高い。これまで中国資本の代理店を通して販売していたが、〇七年にも中国での現地生産を開始する。現在は藩陽に工場を持ち、抗潰瘍剤「カスター」や排尿障害剤「「ルナール」を生産販売していたが、ここにプログラフの生産ラインを設ける予定。

 同工場を拠点として、プログラフの徐放性製剤や口腔内崩壊錠、過活動膀胱治療薬「ベシケア」やアトピー性皮膚炎治療薬「プロトピック」など、中国でも需要の高い医薬品を順次投入していく予定。

 中国市場の現在の売上げは約八〇億円だが、これを二〇一〇年には倍増するとしている。

 協和発酵工業も〇七年から蘇州で医薬品の一貫製造を始める予定。血圧降下剤の「コニール」や抗アレルギー剤「アレロック」などを製造販売していく方針。

 点眼薬大手の参天製薬も〇九年度から現地生産を開始、合成抗菌剤「タリビット」や「ヒアレイン」などを扱うとしている。

 明治製菓も〇五年に原薬工場を中国で稼働させているが、これをベースに製薬の一貫生産を始める予定。

 販売力の強化にも余念がなく、大日本住友製薬は現在中国で三つの現地法人を設置しているが、これを一つにまとめ、中国市場に本格的に取り組むとしているし、田辺製薬も早期に中国での販売拠点を二〇力所に増やすべく、MRの積極採用を進めている。

 三菱ウェルファーマも新薬開発を手がける新会社を中国・北京に設立するなど積極的な取り組みがみられる。

  国の政治制度の成熟を待つしかない本格進出 

 第一三共では、「メバロチン」や消炎鎮痛薬「ロキソニン」など固形製剤の工場を持っていたが注射剤は現地の代理店に依存するしかなかった。そこで同社の現地法人は中国政府の「医薬品経営許可証」を取得して、日本から直接輸入して販売することができるようになった。この許可証を取得したのは外資では初めてという。直接販売を扱うことがどれだけ市場開拓につながるかはわからないが、着実に巨大市場に一歩を踏み込んていることは間違いない。

 ただ各社とも中国での売上げは十数億円程度にすぎない。まだまだ端緒についたばかりといえる。

 市場の潜在力はすさましいが足元は小さな市場にすぎないし、中国という国家の未成熟さにまだまだ本格展開するには二の足を踏んでいるところ。

 どの国でもそうだが、医薬品は国の関与の度合いが強い。自由主義の米国でさえ自由に扱うことはできないほどで、健康に関わる問題だからそれは当然。中国でも同様で、しかし中国の行政レベルは未成熟さを露呈させている。いちいち実例は挙げないが、対日関係でそれは顕著に現れることでもおわかりだろう。行政が恣意的に政策を行う国では、リスクを取って本格的に取り組むわけにはいかないのである。

 医薬品に関しても、苦労して許可を取っても明日制度がいきなり変わる、ということにもなりかねない。だから、現状ではどの医薬品メーカーも中国には進出しているが、足がかりを構築している程度。この巨大市場を指をくわえてみているわけにはいかないが、場合によってはいつでも撤退できる体制にしておかねばならないという初期の状態。

 本格進出は中国の政治制度の成熟を待つしかない。トップの武田が中国に本格的に取り組んでいないことから、武田の動きがその指標となろう。