医薬翻訳サービス

薬理学、生化学、統計学に精通した翻訳士が対応いたします

生命、遺伝子操作の特許取得に伴う安全性への影響

 

 

 現状では遺伝子工学分野でも、高度な開発科学の水準に相応する安全性や環境影響などについての検証科学の水準が認められるかどうかが問われる。たとえば、いわゆる「眠っている遺伝子」と「目覚めている遺伝子」との関係について、現状ではなお不明の点が多い。生物の生長の過程でどのようにしてある種の遺伝子がロックされ、ある種の遺伝子だけがアンロックされて機能し続けるのか、そのメカニズムが十分に解明されていない。遺伝子組み換えに伴う何らかのきっかけで、ロックされていた遺伝子がアンロックされるようなことがないのかどうか、が率直に問われている。また、マクリント・ソク博士が見つけた「歩き回る遺伝子」(位置が移動する遺伝子)の意味について、特に遺伝子組み換え操作との関連性についてもわかっていないことが多い。種属の壁を越えることによって、組み込み遺伝子の種類によって定衿性に差があるのかどうかも明らかになっていない。組み換えられた部分の遺伝子で突然変異が起こりやすいか、という問いにも一概に答えることができない。今日の段階では、生命操作技術の過程には、なお相当に「未知」の曜が……立ちふさがっていることを謙虚に冷静に認めなければならないだろう。

 

 今日の生命工学、遺伝子操作が持っている最大の問題点の1つは第9章に示したような特許制度によって開発段階から試験栽培、認証、消費段階にいたるまで安全性関連情報が企業側によって独占されており、行政側を含む第三者には企業側によってもたらされるデータの客観的な評価がしにくいというところにある。安全性の確保にとって、これは消費者の利用以前に、その商品の問題性が察知しにくいということであり、もしも企業側によって好ましくないような情報処理がなされていた場合には栽培、加工後の消費者の実際的な利用以後に問題が判明してくることになる。たとえば、周知されているブラジルナッツからのアレルギー性の移行の問題では、企業自身の自主的な販売中止によって消費者に被害が出ることが食いとめられたが、もしそうでなかったら、市販されて、実用以後に発見されて大きな問題となり、米国のFDAでさえどうしようもなかったであろう。また、トリプトファン事件でも、あれだけの患者が出るまで、全く予知することができなかったのである。        し

 知的所有権の保護は必要である。しかし、企業の私権が公益に優先するようなシステムによって消費者に被害のしわ寄せが行くようなことをしていると、そのような特許によって保護された商品は次第に消費者の疑惑の対象となって、警戒されて、やがて、「売れなく」「買われなく」なるだろう。今日の遺伝子組み換え作物・食品が行政、企業側の猛烈な宣伝のもとでさえ、80%以上の消費者の信頼を得ていないのは、このことが大きく関連しているためであると考えられる。少なくとも安全性に関連する部分についてだけでもデータを公開し、第三者の追試をうけて、問題がないことを確認してから審査、認証、栽培して、消費過程に乗せるようなしくみの改善がないかぎり、21世紀に予想される、全世界的な遺伝子組み換え操作の一般化、組み換え食品の普及という情勢は安全性や生態系影響の面で危機的な状況をうみだす可能性があるだろう。