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安全性、成分、作用、慢性毒性、特殊毒性などの検証

 ダイズは天然のダイズでも地域的に、栽培種ごとに遺伝子構造が同じとは限らない。遺伝子構造が同一のダイズを、かりに「絶対的同等性」を有するものだとすれば、いわゆるダイズ一般は「普遍的同等性」を有するものであるということができる。遺伝子組み換えによってつくられたダイズは人為的に組み換えられた遺伝子構造を持っており、これに起因する非ダイズ由来の新規な蛋白質酵素などを含有している。この場合になぜ「実質的に同等」といえるのか、が問題になるが、絶対的同等性と普遍的同等性と実質的同等性の差の大きさを知るためには、最高度の検証手段によって最大多数項目での形態、成分、性質、機能などを精密に対比、確認することが必要になってくる。

 遺伝子組み換え作物・食品に関する疑問や混乱は、おそらく、この「実質的同等性」という目新しい概念が安全性の分野に唐突に登場しているこ
とに起因していると思われる。

 食品添加物や農薬でも「絶対無害、絶対安全」が保証されているのではない。それらは、いわば「実質的無害」であり、「実質的安全」であることが一定のルールにもとづいて保証されている。そして、それらの点について消費者のコンセンサスがある程度まで社会的にも成立している。

 遺伝子組み換え作物・食品の場合には、「実質的同等性」と「絶対的同等性」の間差を、特に安全性などについて、細部まで明らかにするための学問的な方法論がなお不完全であり、他方でこの間差を埋めるための法的、行政的なシステムに欠陥があり、間差の存在を知らせる情報媒体としての表示も行われてこなかった。だからこそ、結果的に一般の食品とは明らかに相違する、遺伝子組み換え処理を受けた食品が「実質的に同等である」として、何ら区別もなしに押し付けられていることに消費者は明らかに不満を持ってきたのである。食品添加物の場合には、ポジティブリスト・システムのもとで、法的、行政的な約束に従って安全性その他についての最高度の検証措置がとられており、しかも、公的な認可制のもとで、全面的に表示が行われている。

 遺伝子組み換え作物・食品を国民的なコンセンサスのもとに置くためには、現行の体制のままで実質的同等性をあたかも絶対的同等性であるかのごとく見せかけて、消費者にそれ自体を理解させようとしても無理があり、実質的同等性と絶対的同等性の間差を極小化するための担保措置を具体的に、もっと詳細に示すことが必要である。

 すなわち、第1に、遺伝子組み換えによって新規に生成した蛋白質および酵素によって生成した代謝産物などという決定的に実質的非同等物質についての安全性、成分、作用その他についての検証を慢性毒性、特殊毒性などを含めて、もっと徹底的に実施する必要がある。

1種属の壁を越えた遺伝子の組み換えに問題はないか
2遺伝子間のネットワークに影響を与えないか
3遺伝子間の情報伝達機構に影響を生じないか
4新旧遺伝子間に拒絶反応様の作用が生じないか
5眠っている遺伝子が目覚めるようなことはないか
6組み換え生物は進化の歴史にどのような影響を与えるのか

 従来の育種が同種間、類縁種の間で行われていて、さしたる支障がなかったことは、一定の条件が容認された場合には、遺伝子の移行、組み換えには問題がない可能性があることを思わせるが、遺伝子組み換えの場合には、進化の過程での生物の一定の区分、囲い込みに相当する種属の壁を無視して、あまりにも自由な遺伝子の組み換え、移行操作が行われており、単純に既存の育種技術の延長とみなすわけにはいかない事情がある。

 

 特定の形質に関連する遺伝子を選び出し、これを任意の生物のDNAに組み込み技術はますます高度化、汎用化されるようになるだろう。しかし、そのような技術開発の過程で必然的に増加するであろう操作ミスに関する処理が企業などの開発部門で、内部的に、不完全に行われることによって、その影響が安全性、環境影響などの形で、次第に顕在化してくる危険性があると予測される。すでに現時点でさえも全世界的に数千種類にも上るような開発途上の遺伝子組み換え作物があるとされているが、何らかの形での法的、行政的な監視体制を整備しない限り、そして国際的な規制体制を強化しない限り、いつかは破局を招く可能性があるだろう。