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Bt遺伝子のBt蛋白毒素が希少種の蝶に有毒


 最近の研究によれば、バチラス・チューリングンシスからとったBt遺伝子によってつくられるBt蛋白毒素が、標的生物であるある種の害虫以外にモナークという希少種の蝶に対して有害であることがわかった。これは毒素の受容体の生物特異性にも相当に幅があることを意味している。また、こうした事例が、このトウモロコシが認証されて広範囲に栽培されるようになってから、最近になってやっと判明してきたということは、生態系の多数の生物種に関して、事前に広範囲の生物実験を行うことが不可能に近いことをよく証明している。栽培現場に生息する類縁生物に対する毒性の有無程度の実験データは完備していなければならないだろう。

 新規生成蛋白質の持つ生物毒性の安全性の検証については、企業側の代表者が当初から毒性試験は不要であるとするような解説をしてきた。一般の食品由来でない生物蛋白質を微量、長期間摂取した場合の安全性についてはこれまであまり実験例がなく研究も不足していた、という方が正しい。遺伝子組み換え作物・食品が登場して初めて、入念な毒性試験を必要とする課題として浮上してきた問題であるというべきであり、今後慎重な取り組みを必要とすることはいうまでもない。


 1998年の8月、イギリスで行われたパズタイ博士の実験では、遺伝子組み換えのジャガイモを飼料として与えたラットに免疫力の低下、脳などの臓器重量の低下、発癌の可能性がみられた。研究所では、この実験結果を博士の竟に反して否定したが、99年の2月には欧州13か国20人の科学者が、この論文の正当性を支持する声明を行い、米国の科学者、開発企業はこれに反論し、今日まで大きな混乱が続いている。

 なお、イギリスのチャ-ルズ皇太子が遺伝子組み換え作物・食品の安全性を疑問視するフォーラムをホームページに開設して世界的に大きな反響を呼んでいることが知られている。

 パズタイ実験の無効性を主張する以前に、同様な生物実験を行って精密に再検証することのほうが重要であろう。

 副成する有害化学物質の毒性を検証するためにも、(2)の食品衛生学的な既存の毒物学にもとづく動物への投与実験は正確に実施することが必要である。

 遺伝子組み換え作物・食品が安全であるという判断が下されるのは、毒物学、食品衛生学的に有害と判定される生体影響が認められなかった場合である。

 遺伝子組み換え作物・食品については、これまで安全性に関して、通常の毒物学的な検証方法がとられないで、実質的同等性の論理にもとづく検証法が採用されているが、これは従来の食品化学物質の毒物学的な安全性の検証手法に比べて、1ランク下の安全性の検知法であるといわなければならない。遺伝子組み換えに起因する生物蛋白質や生成物質もまた食品化学物質として包括的に、短期、長期毒性が検討されなければならない。企業側が主張するような、慢性毒性試験が不必要であるとする論理は成り立たない。高分子の蛋白質やペプチドが腸管壁から極微量吸収されることは事実であり、自家中毒やアレルギーが発生する可能性がある。最近の研究で、蛋白質の分解産物であるディペプチド、トリペプチドなどが顕著な生理活性作用を示すことが証明されている。

 今後、遺伝子組み換え作物・食品の組み込み遺伝子の特性の種類が増え、組み込みが複数化する傾向にあるだけに、安全性の確保に関して、いっそうの厳格化を図る必要があると思われる。