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公的な検証、審査、認証組織への信頼性の低下

確認の方法論的な欠陥だけでなく、システム的な欠陥によっても安全性の確保は不可能になる。法的な根拠を明俑にした食品添加物のような規制でなく、企業の任意性を最大限に認めたシステムが存在していて、しかも、たとえば、認証のための委員会の人選や運用が行政側の相当に恣意的な裁量に委ねられている場合には、そこから得られる結論は信頼しがたいものとなる。

 安全性問題に関して、私たちはこれまでシステムの運用を誤ったことによる被害事例を戦後多数経験してきた。

 1999年12月14日の厚生省の発表では、現行のガイドライン制を食品衛生法にもとづいた法的義務制に改める方針である、ということであるが、実質的にガイドラインと同様な審査基準が維持されるのであれば、ほとんど無意味である。安全性確保のシステム形成は慎重でなければならない。

 消費者にとって遺伝子組み換え作物・食品が安全であるといえるためには、商品化されるまでの、そして商品化された後の流通、販売、消費の過程において、安全管理のためのシステムが適切に構成され、正常に機能していることが必要である。その意味では前に一部述べたが、遺伝子組み換え作物・食品は、次の事項においてシステム上の問題を抱えている。

(1)特許制度での審査データの信頼性

 遺伝子組み換え作物・食品は食品分野では、特許という企業の知的所有権による技術的な内容が最も保護された食材である。

(2)第三者データの不在と傍証の困難性
 企業の特許の壁は審査、認証にあたって、第三者による安全性関連のデータの確認を困難にしている。

(3)企業の任意性の容認
 法的な審査制度ではなく、開発、栽培実験、安全性の審査などのすべての過程で、行政的な強制力のないガイドラインによる認証が行われてきた。

(4)実質的同等性の検証理論と手法の不完全性
 従来の毒物学的な手法でなく、実質的同等性という検証の理論と手法によって安全性が評価されている。

(5)判別、定量など確認方法の不完全性
 認証以後の商品についての判別、定量などの品質管理に関しては全く放任されてきた。

(6)後代・交配種の監視システムの不在
 後代・交配種がどのような安全性に関する性状の変化を示すか、監視する義務が開発企業側にも監督責任がある行政側にも賦課されていない。

(7)生態学的なリスクについての検証の困難性
 栽培過程で、生態系に対して与える影響を正確に検証する方法などが示されていない。生態系の異常化は最終的に、食糧問題などで困難な状況をうみだす。

(8)公的な検証、審査、認証組織への信頼性の低下
 安全性確保にかかわる公的機能の低下は、生産者、消費者に疑心暗鬼をうみだして、食糧、食品に対する信頼性を失わせる。

(9)法的拘束力の不足、行政指導の限界
 このような新規食材に対して必要な、法的な拘東力を制約、抑制するような政策がとられてきた。食品衛生法による規制を行って、一定の秩序を回復し、その枠内で自由な企業の活動を保証する、表示を行って自由な消賞者の選択を可能にする、そのような消費者本位のシステムが、これまで存在していなかった。

(10)再審査、監視、問題情報収集体制の不在
  後代・交配種の安全性の審査が行われていない。遺伝子組み換え作物・食品の生態系や人の健康に対する影響を監視する体制が不在である。輸入状況を把握して情報を公開するシステムも見られない。

 遺伝子組み換え技術の理論的、実技的な完成度が必ずしも高いとはいえないなかで、大々的な実用化、商品化の段階に入り、しかも、それから数年にもならない現時点において、遺伝子組み換え作物・食品の安全性が確証されているとはいい難い。おそらく、何らかの被害や影響が顕在化するまで現状が維持される可能性があるのではなかろうか6