医薬翻訳サービス

薬理学、生化学、統計学に精通した翻訳士が対応いたします

獣人を作るための特許出願

 

 臓器移植が大きな社会的な課題になっているが、移殖推進側にとって、人固有の拒絶反応の抑制と臓器提供者の不足が最後の問題点になっている。これは法的、行政的な体制整備に手間取っている我が国ばかりでなく、全世界的な課題といえるが、この2つの問題点を解決する方法として生命工学によるクローン技術の応用が考えられている。すなわち、その1つの方法は動物に人の遺伝子を組み込んで人の臓器をつくらせることであり、他の1つの方法はさらに進んで人のクローンそのものを臓器移植用にパーツ用人間としてストックしておくことである。医学の進歩のために、移植を待ち望んでいる患者のために、などとする大義名分が安易に掲げられて、現にその方向での研究では、パーツ用人間はともかくとして、パーツ川動物はもはや完成寸前にきており、イギリスのロスリン研究所のクローン羊も、そのための研究過程でうみだされた生命体であるといわれている。

 人の命を救うために、動物に人の臓器をつくらせるという、この行為をどのように考えるか、人の命を養うために、現に人は動物を飼育して、そして殺して食料にしている。それならば、臓器移植用に動物を使うことは許されるという論理も認められるのであろうか。 しかし、このような考え方は必然的に、より完全な臓器移植用パーツ人間づくりへの道を闘くことになる。動物を母体とした人の臓器づくりではどうしても不完全であり、より完全な、人を母体とする臓器づくりが医学的な目標となることは間違いない。私たちはこのような医療、科学、技術のあり方が、生命倫理の問題と深刻な形で抵触する可能性があり、軽々に結論を出すことはできないと思っている。

 人が生命の形質を左右することができるようになったという生命工学、遺伝子工学というものの重大性を、人類はこの20世紀の終わりになって痛感せざるをえなくなっている。 J・リフキンとS・ニューマンは遺伝子組み換えに反対する研究者として有名だが、彼らが1997年12月にヒト・サル、ヒト・ブタ、ヒト・マウスという3種の獣人を作るための特許を出願したことが報じられている。これはそのような恐るべき事態の発生を特許権確保によって抑止するためであるとはいえ、すでにそのような危険な技術が存在していることを意味しており、この技術の悪用を防ぐための、社会的な生命倫理感の徹底や体制整備の必要性を感じないではおられない。