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第三者機関のチェックが効きにくい既存のガイドラインシステム

 

 我が国の遺伝子組み換え食品に関する既存の公的な審査や認証は、科学技術庁農水省の管理下に、開発、栽培、食品の各段階においてそれぞれ実施されてきた。しかし、これは食品添加物や農薬などの場合のように法的な根拠にもとづく規格、基準を設定し、規制を行うものでなく、行政的な指導の指針となる、いわゆるガイドラインにもとづくものであった。たとえば、企業の開発過程での新規の遺伝子組み換え作物に関するさまざまな実験において、多数の試作生物が作られるが、それらの廃棄、処理が完全に行われなければ問題が生じる。実験室の設備、施設、研究者の資格などについての一定の制約があるが、実際の作業過程では、企業秘密のベールのなかで、どのような企画が設定され、開発か進行しているか、外部には一切秘密にされて、結果的に目的とする新規の組み換え生物がつくられる。生物兵器から個人の興味や趣味、研究目的に該当する試作生物まで、それらがどのようにして作られ、どの期間に、どのように処理され、保管され、廃棄されるかは全く企業や研究者の任意に委ねられている。

 実験室で試作された遺伝子組み換え生物は温室栽培を経て、圃場実験に移行するが、この過程でも一般の自然環境への散逸を警戒しなければならない。たとえば、風や昆虫によって花粉が広範囲に運ばれて、場外の生態系に問題をもたらすことが危惧される。害虫抵抗性の遺伝子を組み込んだ遺伝子組み換え作物は、標的害虫以外の昆虫に影響をもたらす可能性があることが報告されており、生物の実験や栽培では完璧なクローズド・システムがっくりにくいだけに開発、栽培過程での企業や研究者の責任は非常に重くなる。こうした場合に公的な責任が伴わず、第三者機関のチェックも効きにくい既存のガイドラインシステムが有効であるのかどうか、はなはだ疑問であるといわなければならない。

 各過程で、行政側による指導や監督が実際にどのようなシステムで、どの程度実施されているかについての情報が社会的に公開されることが必要だろう。しかし、遺伝子組み換え技術は先端技術の最たるものであり、特許の壁は異常に厚い。届出も全く法的義務とはされていない。このようなシステムが生命の根幹である遺伝子を操作する技術分野で、ほとんど野放しに近い状態に置かれてきたのは全く驚くべきことであった。 ̄万一の事故の場合の通報体制や処置、対策が完全に行われるための責任の所在、罰則などの定めが必要であった(ヨーロッパでは非常事態を想定した対策が検討されていると報じられている)。今後この技術が広く各企業で一般的に利用されるようになり、また組み込まれる遺伝子の特性が多種多様になっていくような趨勢が予想されるなかで、相応した法的、行政的な対応のあり方が強く求められるようになるのは当然のことである。

 食品として提供される場合の安全性の審査と検証については厚労省が担当してきたが、消費者の食生活の安全を確保するうえで、既存のガイドラインシステムには非常に多数の問題点が認められている。