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新規開発食品添加物の申請について:ポジティブリスト・システム

 

1規格、基準の設定
2分析法の確立
3公定書への記載
4表示の義務づけ

1急性、亜急性、慢性毒性資料
発癌性、特殊毒性などの資料
3第三者研究機関の資料

 企業、開発者は国に対して新規開発食品添加物の使用のための認可を得るために申請しなければならない。国はこれを受理しなければならない。そのあと厚生大臣は食品衛生調査会に対して諮問しなければならない。食品衛生法によって設置が規定されている食品衛生調査会ではこれを受けて審査を行い、その結果を厚生大臣に対して答申しなければならない。審査にあたって必要な資料のうち、最も重要なのは安全性についての食品衛生学的な急性、亜急性、慢性毒性に関する毒物学的な試験の成績であり、特に慢性毒性試験や発癌性、催奇形性、変異原性、アレルギー性などの特殊毒性試験の結果が問題にされる。

 また、安全性に関する動物実験のデータについては、自社の責任にもとづく資料以外に、関連する第三者研究機関でつくられた参考資料を添付することが望ましく、審査にあたってはそのような資料と対照して慎重に検討することが求められる。推定摂取量と許容量との関係についても問題がないことが明らかにされて、認可の可否についての結論が厚生大臣に対して答申される。これを受けて厚生大臣が認可する場合には、食品添加物についての規格、基準を定め、公定分析法を明示し、表示を義務づけることになり、それらの仔細は公定書に正確に記載することがきめられている。

 認可された食品添加物の一般的な使用にあたっては、各地域の保健所の食品衛生監視員による市場での監視、収去、検査や業者に対する指導などが行われる。これらは法的に定められたシステムであり、国や自治体は相応した法的な責任を負うものでなければならない。

 以上のような公的な規制の方式は、一般にポジティブリスト・システムと呼ばれている。戦前のネガティブリスト・システムでは、すべての食品化学物質が原則的に使用可能であったなかで、禁止されるものだけが明示されており、したがって警察などによって違法使用が取り締まられていた。しかし、ポジティブリスト・システムではすべての食品添加物の使用が原
則的に禁止されているなかで、食品衛生調査会の答申を得て、厚生大臣が認可したものだけが使用可能なしくみになっている。この方式は国が公的な責任を有するという点で優れており、内容的にも、もっとも高度に発達した食品衛生学的な安全確保の方式であるといえるだろう。

 我が国のこれまでの遺伝子組み換え食品の認証は、原則的にネガティブリスト・システムの方式に準じたものとなっていた。審査にあたって認証されなかったものが使用されないように、行政的な努力が傾注されることがあっても、本来申請自体が任意であり、審査の内容でも企業側のデータを無条件に信頼するという前提がおかれており、市場での規制、表示などについての監視も行われていない。遺伝子組み換えという相当に問題含みの食品について、このような企業にとって有利なシステムが設定されていることに対して消費者が不安を感じるのは当然のことであろう。

 現に、最近になって我が国の消費者団体がガイドラインによって審査を受けていない輸入ものの遺伝子組み換え食品を市場で発見して、厚生省に対して通報するという事態が発生し、厚生省もこの事実を認めたが、何ら法的に処置することができなかった。これは、審査、届け出についての企業側の任意性を認めた既存のガイドライン制の限界を如実に示すものである。将来的に輸入大国である我が国の場合には、類似の事例が頻発するものと予想されるだけに、輸入検疫時点で、正確な法的審査、認証が行えるようにすることが必要である。

 要するに、遺伝子組み換え食品をネガティブリスト・システムとポジティブリスト・システムのいずれの対象にするのかという基本的な問題についての考察が重要であり、これまで国はその判断を誤っていたということができる。この問題は、結局は遺伝子組み換え食品を食品衛生法の対象となる新規食品と位置づけるのか否かということに帰着し、そのためには実質的同等性概念の問題性への認識のあり方が関連してくることになる。