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報告書の「安全性審査の考え方」

 

 「安全性評価指針および製造指針の考え方には、現時点で変更を加えるべき点はないことから、これを基本的に変えることなく法的義務化することが適当であること。これまでに安全性評価の審議をしてきた過程で得られた蓄積をもとに、安全性評価の具体的な基準を『組換えDNA技術応用食品および食品添加物の安全性審査基準案』としてとりまとめたこと」

 しかし、「安全性確認の審査基準」の内容が従来のガイドラインによる認証と同水準、同程度であるというのなら、今回の審査の法的義務化の意味はない。

 遺伝子組み換え食品が我が国に初めて登場した1996年以後、今日までの遺伝子組み換え作物・食品をめぐる多数の問題研究報告に即して、あるいは研究者側からの指摘に即して、さらに消費者の不安、懸念、疑問、要請に即して、よりレベルの高い安全性の確保や、より厳しい生態系の保全をめざして、審査基準の内容は当然大幅に変更が加えられるべきものであった。

 たとえば、今回の[安全性確認に係る審査基準案]では、安全性に知見が得られていない場合の試験の成績に関する事項」として、「次の試験成績にもとづき食品としての安全性が確認できること」としており、ここで初めて急性毒性、亜急性毒性、慢性毒性、生殖毒性、変異原性、癌原性、その他必要な試験を実施する、ことが示されている。これはガイドラインによる審査の場合と全く同様な対応であり、これまでにも最も批判されてきたところでもあるが、あらためて問題点を指摘しておくことにする。

①[第2項から第6項までの試験成績で安全性の知見がえられていない]のであれば、それだけで審査に不合格とするべきである。それ以上に、まるで救済措置のように位置づけた毒性試験などを実施させる必要など全くありはしない。これは毒性試験の位置づけを全く誤った、論理的にも不可解で異常な規定である。

②第7項の急性、亜急性、慢性毒性試験を以上のように第2義的に位置づけているのは明らかに誤りである。これは消費者の、日常的、反復的、長期的な遺伝子組み換え食品の摂取実態に即して、まさしく第一義的に実施するべき安全性の確認事項とされるべきである。

 最近のイギリスのパズタイ博士らの実験では、遺伝子組み換え食品の動物投与実験で有害性が証明されていて、それ以後世界的に激しい論争が行われるようになっている。少なくとも今後の各地の研究者による動物実験、毒性試験の推移を慎重に見守るべきである。この時期に、毒性

試験を第2義的に位置づけるようなガイドライン当時の規定を、そのまま再度持ち出すのは不謹慎であり、少なくとも慎重さを欠いている。

 さらにトリプトファン事件のような事態が過去にあったことを踏まえて、96年当初とは異なり、今日では消費者の関心が長期間の摂食時の安全性問題に最も集中していることを忘れてはならない。さらに今後、多様、多数の特性を具有した組み換え食品が登場しようとしているときに、個別、詳細な急性、亜急性、慢性毒性試験を優先的に行う必要があることはいうまでもない。また近々、我が国に遺伝子組み換え米などが登場しようとしているが、第7項の毒性試験を第2義的に位置づけているようでは、毎日、生涯にわたって食べ続けるような典型的な主食としてのコメが、我が国の消費者に容易に受けいれられないことも明らかである。