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除草剤耐性ダイスGMOaと害虫抵抗性ダイズGMObはいずれも同種

 

 生物多様性条約・締結国会議において、遺伝子組み換え生物は輸入国の許可がなければ相手国に持ち込めない、取引が規制されることが決定されたが、後代・交配種を相手国で作成すれば、どのような種類のものであっても問題がないことになる。同種間交配であるといっても予想もつかないような後代・交配種ができる可能性があるが、それでも全く審査が必要とされないことになる。

 遺伝子組み換え生物の後代・交配種の経時的、世代的な動態については科学的なデータの蓄積が不十分で、厳密には未知、不確定な事項であって、慎重な監察、対応の必要性があり、少なくとも慎重な観察と定期的な点検が必要である。たとえば、在来種である宿主と遺伝子組み換え体の変異率や変異のあり方については現状では推定、予測が困難であるとの遺伝学者の見解がある。現に出現している2種の遺伝子を組み込んだ遺伝子組み換え作物において、あるいは今後出現が予想されているマルチトレイツGMO(複数遺伝子組み込み作物)の後代・交配種での変異率や形質安定性については、まだ確定的な見解がないというのが実態ではないのか。それならば、今回のような後代・交配種についての審査基準は、あまりにも楽観的で慎重さを欠くというべきではなかろうか。

 同種間での交配には問題がないという規定が行われているが、たとえば、除草剤耐性ダイスGMOaと害虫抵抗性ダイズGMObはいずれも同種であって、交配が禁止されている亜種の関係ではない。しかし、もしもこれらが交配されて、GMOabがつくられたとすれば、これは安全性審査の対象にはならないのであろうか。

 基本的に審査の対象となる遺伝子組み換え作物の企業が提出したデータ自体が数代の作物についてのデータの混合である可能性が大きい。その間にどのような自然的、人工的な交配が行われたのかもわからない。後代交配種の遺伝子構造や特性が不変であるという仮定は、それほど確実である
といえるのであろうか。

 再評価については、告示案の第4条に次のように示されている。

 安全性の審査を行った食品または食品添加物について、新たな科学的知見が生じたとき、その他必要があると認めるときは、食品衛生調査会の意見を聞いて再評価を行い、人の健康を損なうおそれがあると認められる場合には、同条第2項の公示を取り消すものとする。

 しかし、「新たな科学的知見が生じた」ことを誰が認定して報告するかの定めがなく、国としてこの点を主体的に調査、検査するための規定も設けられていない。

 後代・交配種の場合もそうであるが、審査認定を受けた後、生物としての組み換え植物は時間の経過とともに、世代交代後の後代種として、あるいは人為的、環境的、自然的な条件下での交配種として遺伝子構造が微妙に変化していく。この場合に審査当時の形質、特に安全性に関する性質がいつまでも不変であるとは限らない。これは化学物質の場合とは全く異なるところである。種の壁を越えて作られた組み換え生物の場合には、これまでに蓄積された情報が乏しいために、遺伝子構造の変異のあり方についても特別に注意を要するとされている。したがって、一定期間後に再評価を行うことについて、厳格に規定する必要がある。今回の告示案では、事実上企業側がたえず後代種、交配種について同定試験を実施して変化の有無を確認したうえで、再評価を申請しない限り、いったん審査に合格して認証された以後の遺伝子組み換え食品が危険な性質を獲得するようになったとしても、消費者側には全く知らされいたことになる。このままでは、おそらく被害が発生したり、栽培後に何らかの異常が発見されたりするような、いわゆるエマージェンシー(突発事故)がなければ、再審査されることはないのではなかろうか。

 生命倫理の見地からの規制事項は必要ではないのか。ベジタリアンの認知、選択のための表示は正確にする必要はないのか。