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農水省管轄のJAS法による品質表示の観点

 厚生省、農水省は、表示問題については1996年の当初からモンサント社などの企業側と全く同じ姿勢をとってきた。すなわち国会の答弁や審議会、公聴会、あるいは各地でのシンポジウムなどでも、行政側の担当者は遺伝子組み換え食品では「実質的同等性が証明されており、したがって安全である。安全なものに表示をつける必要はない」とする論理が強調されてきた。

 これに対して、
1)遺伝子組み換え技術を応用してつくられた特徴的な商品であることを示す品質表示を付するべきである。

2)遺伝子組み換え技術を用いてつくられた特徴的な商品であり、安全性などについて未知の部分を持つ可能性があり、予防的な観点からの表示も必要である。

 以上のように、農水省管轄のJAS法による品質表示の観点での表示と、厚生省管轄の食品衛生法による表示のいずれもがが可能であることが主張されてきた。

 いうまでもなく、消費者の基本的な権利としての、知る権利、選択する権利のための表示を、遺伝子組み換え食品のような画期的な商品について消費者が強く要請するのは当然であって、国会の物価特別委員会の遺伝子組み換え食品部会での審議においても、農水省の表示のための審議会でも、表示が必要であるという結論が1999年夏までに得られている。問題は、どのような表示をいかなる法律にもとづいて行うかということであり、その点について、それ以後行政部内で論議が続けられてきた。

農水省の対応

 農水省は最終的に、「農林物資の規格化および品質表示の適正化に関する法律」(JAS法)の品質表示を義務づけることに決定し、2000年4月に告示し、2001年4月から実施することを公表した(その詳細については拙著『遺伝子組み換え食品を考える事典』を参照されたい)。

 2000年2月9日には、遺伝子組み換え作物の環境への安全性を検討する学識経験者による専門委員会を農林水産技術会議に設置することが公表された。農水省は1989年に策定された指針にもとづいて試験栽培などでの交雑性の影響などの安全性を評価してきたが、安全性確保対策を充実させるため、法制化を含めた指針の見直しも含め広く検討したいとしている。農水省としてのJAS法による品質表示が生態系への影響を検討したうえで、さらに厚生省による安全性の検証をふまえたうえで、正確に実施されるようになることは好ましいことである。

厚生省(当時)の対応

 表示問題については、食品衛生調査会の表示特別部会で論議が続けられてきたが、1999年3月になって報告書が公表された。そのなかでは全体的に表示問題についての考え方が整理されているが、「安全性の確認がなされたものについては公衆衛生の見地からの表示は必要でない」とする意見と「予防的観点からの表示が必要である」とする意見が両論併記の形で示されており、引き続き検討を行う必要があるとしてきた。

 しかし厚生省では、「現時点での結論が出ていないにしても、この問題についての消費者の関心が高く、安全性の評価に対する理解が十分に得られていないことを考慮して、さらに特定の栄養成分を高めるなど、栄養性などについて改変された食品では公衆衛生の観点からの表示が必要とする意見があることに留意する必要があり、今後さらに検討を行いたい」としている。ただし、この場合には遺伝子組み換え技術が用いられていない「一般の栄養性などに特性を有する食品の表示との整合性について配慮する必要がある」としていることに、特に注意しなければならない。

 かつては、遺伝子組み換え食品には表示は不要という立場を固執してきた厚生省の姿勢が、ここにきて急変した理由はともかくとして、農水省の品質表示の法的義務化とならんで厚生省が公衆衛生学的な観点での安全性関連の表示についてまで、前向きの姿勢を示すようになったことは消費者にとって歓迎するべきことである。