医薬翻訳サービス

薬理学、生化学、統計学に精通した翻訳士が対応いたします

生命工学食品安全法の新規制定について

 遺伝子組み換え食品の安全性の確認が、従来、ガイドラインによって行われており、いわば企業の任意制のもとにおかれていたことについての消費者からの激しい批判を受けて、厚生省は安全性の確認を法的義務のもとにおくための原案を提示して、食品衛生調査会のバイオテクノロジー部会に諮問して答申を得ることになった。

 現状では、厚生省は食品衛生法の改正によらず、第7条の「食品添加物の規格基準」(厚生大臣告示)において、「食品が組換え技術によって得られた生物の全部または一部を含む場合には、当該生物は、厚生大臣が食品としての安全性を確認したものでなければならない」などと新たに規定することにより、現行法で法的義務化ができる、とする方針を採用しようとしている。

 厚生省が法的義務化に踏み切ったことは、前述したように一応評価できるが、以下に示すような根拠から、現行法の一部改正や第7条での新規規定(告示)の程度では、今後、多数登場する遺伝子組み換え食品を含む生命操作食品に総合的に対処することは困難であり、この際、食品衛生法を「既存食品衛生法」と改称し、同時に、遺伝子組み換え技術を含むバイオテクノロジーによってつくられた新規食品全般を対象とする、仮称「生命工学応用食品安全法」を制定することを提案したい。

以下にその根拠を示す。

1) 20世紀の末期になって開発されたバイオテクノロジーによる作物、食品は既存の天然の作物・食品とは、遺伝子、DNAを何らかの形で人為的に操作した点で本質的に異なるものであり、その証拠に、たとえば人為的、人工的な生命科学技術の産物として、作物・食品自体が特許などの対象となっている。このような農水産業以外の化学企業などの利益に直結しているような作物・食品については既存の農水産業による栽培、飼育などによってつくられた作物・食品とは全く区別して別種の法体系で取り扱うことが望ましい。

2)現行の遺伝子組み換え作物・食品の開発、栽培、利用に関する安全性の認証のためのガイドライン・システムは今回の厚生省の法的義務化の方針を受けて、科学技術庁農水省の担当分野でも、法的な裏づけのある規制システムに変更されるべきである。そのためには既存の法律の一部改正ではなく、遺伝子組み換え作物・食品全般にかかわる総合的な新規法制化が望ましい。

3)政府が現在進めている食品衛生法第7条の規格基準に付則として遺伝子組み換え食品の条項をつくる場合では、事実上、遺伝子組み換え植物、微生物などを想定したものとなっているが、遺伝子操作を含む、いわゆる生命工学によってつくられる生物全般が安全性確保のための法的義務化の対象となるべきではないか。この際、すべての生命工学関連食品、たとえば、最近問題にされている体細胞遺伝子の移殖によってつくられたクローン牛肉などの場合も包括できるような新しい法体系にするべきであろう。

4)遺伝子組み換え作物・食品は望むと望まざるとにかかわらず、今後激増することが予想される。たとえば、1999年時点で世界的には約4,500種類の遺伝子組み換え作物が圃場実験に移行中であるといわれている。このような新規食材の安全性や食品衛生を確保するためには、新規に生命工学応用食品を一括して取り扱う法律をつくって、これに相応する行政的な体制の整備をはかる必要があるのではないか。