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生命科学応用食材:生殖細胞操作生物、生長点培養生物、倍数染色体生物など

食品衛生調査会の論議では、食品衛生法の一部改正などではなく、規格基準の改正などにより対応することが適当である理由として、次の3点をあげている。

 

①規格基準では抗生物質などの含有禁止、放射線照射の禁止など、食品に関するさまざまな成分規格、製造基準などが定められており、安全性確認を受けていない遺伝子組み換え食品の販売、輸入、製造などを禁止することは規格基準になじみやすい内容であること。

②バイオ技術については、組み換えDNA技術のほかにも、体細胞クローン技術など、多種多様な技術が今後実用化されることが予想され、こうした際に機敏に対応していくためにも逐一法律改正を行うのではなく、規格基準(告示)の改正により対応することが妥当。

③あまたの食品のなかで遺伝子組み換え食品のみ、法律上特別の条文を設けるのはバランスを欠くこと。ところで、生命科学応用食材としては、広く、次のようなものが問題になると考えられる。

生殖細胞操作生物

 たとえば、クローン生物(動植物、微生物を含む)などはすでに食材として市場に出回っており、消費者の間に問題意識が持たれるようになっている。今後この技術による食品は、さらに一般化する可能性がある。安全性の確認、認証、表示などに関して一定の法的、行政的な対応を必要とする。

細胞融合生物

 各種の細胞融合生物が出現しているが、同種間細胞融合だけでなく、異種生物問の細胞融合技術が進歩する可能性があり、この場合には遺伝子組み換え技術の場合以上に安全性の確認、認証、表示などについての対応を必要とする。

遺伝子組み換え生物

 一般に、種の壁を越えて人為的に作られた生物を食用とする場合には、既存の食品衛生法が取り扱ってきた、いわゆる「新規食品」であると考えられるので、安全性の確認などの法的、行政的な対応を行う対象として厳しく位置づけるものとする。

 遺伝子組み換え作物・食品の開発、利用に関しては現状では問題点が多く指摘されており、検証科学水準が向上し、社会的受容性が大きくなるまで一時的にモラトリアム(一時凍結)の状態におくことが望ましい。しかし、既成事実として今後つぎつぎに登場することが予想される遺伝子組み換え作物・食品に対しては法的、行政的に厳しい制約を設けておくことが必要である。

生長点培養生物

 ウイルスフリーを目的とする生長点培養生物には一般に安全性などでの問題がないと考えられているが、生命操作技術による食材をつくる技術であることも否定できない。したがって、培養過程での安全性の確保や表示についての一定の法的、行政的な対応を必要とする。

組織培養生物

 一般に組織培養技術を応用して、自然環境での生育とは非常に異なる条件下に増殖させて、最終的にこれを食材とするような場合には、従来の作物・食品とは異なる包括的な法的、行政的な対応を行うことが妥当である。工業的な方式、装置などが駆使されて、食材が作られる場合には、いかなる場合でも相応の公的な認証、監視、表示制度が必要になるであろう。

倍数染色体生物

 2倍体、3倍体生物のように従来生物のサイズを変更した生物の場合でも注意を要する。この場合には形状だけではなく、ホルモンシステムなどにも変化がある場合が想定されるので、安全性の検証を行っておくことが望ましい。

雌雄性変更生物

 たとえば、染色体、遺伝子を操作して雌雄性に影響を及ぼし、既存の生物ではありえなかった中性の生物、あるいは雌雄の比率が著しく偏った生物を作らせて食用に供するような技術についても法的、行政的な一定の制約を設けることが必要である。


遺伝子操作、クローン化操作後の後代・交配種

 遺伝子組み換え操作、クローン化操作を行った生物は後代に突然変異を行って、性質、構造などが変化する可能性がある。この場合の変異の状況、変異発生の頻度などについては現状では全く未知である。したがって、安全性などの定期的な点検、再評価などを必要とすると考えるべきである。また交配種についても、亜種間、同種間での交配にかかわらず、包括的に法的、行政的な規制の対象とすることが望ましい。

 従来、全く規制されていなかった育種の場合であっても、従来存在しなかった新規作物などを市場に送り出すことになるのであるから、安全性の保証から表示などを含む法的、行政的な一定の公的対応をすることが望ましいが、今日的な食品の大部分は品種改良の産物であり、それらは現行食品衛生法によって規制されている。したがって既存の育種、品種改良作物、食品などは、とりあえず生命工学応用食品安全法の対象から除外して取り扱うものとする。