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医薬品と食品、日用品では利用条件が異なる

 米国のUSDA(農務省)が遺伝子組み換え作物を有機農産物として認める見解を公表したあと、国内外からの抗議が相次いで、ついにその方針を撤回したことはよく知られている。最近のWHO(世界保健機関)/FAO(国連食糧農業機関)でも有機農産物から遺伝子組み換え作物を除外することが取り決められたが、これは農薬を使用していない場合でも、遺伝子組み換え作物を有機農産物とはみなさない、ということであり、害虫抵抗性の遺伝子組み換え作物でも安易に従来の有機農産物の代替品にはなり得ないことを意味している。遺伝子組み換え作物・食品の実質的同等性という概念が有機農産物では成り立たないことが、あらためて国際的に認知されたという意味で、この決定は非常に重く受け止めなければならないだろう。

利用目的と利用範囲の限定

 いかなる食品であっても、利用の目的と範囲に制約があることは当然である。有用性があるといっても、たとえば医薬品と食品、日用品などについてはそれぞれに利用の条件が異なる。若干の副作用があるとしても、医師の監督のもとで慎重に使用される医薬品の場合と、一般的に日常的に無制限に使用され食品の場合は異なっている。遺伝子操作技術が今後、クローン、人の臓器の作成やホルモンなどの製造のために使用される場合も含めて、一般的な農産物、食品などとして利用されることには、厳しい制約があると考えるべきである。将来的に遺伝子組み換え作物・食品が従来の農産物にとってかわるだろうとするような予測を行うことには慎重でなければならない。


メリットとデメリットのトレードオフ

 メリットとデメリットのトレードオフ(相反関係)は先端技術によってつくられた商品の場合に一般的に問題となるところである。遺伝子組み換え作物・食品の場合にも、メリットあるいはデメリットとされるところについての解析が精密になされたうえで、デメリットを上回るメリットがあるかどうかを利用対象や利用条件ごとに検討されなければならない。

 もちろん、この場合には、デメリットの性質が確認されていなければならない。発癌性が認められるような場合には、メリットとの対比をあらためて行うまでもない。また、自然科学だけでなく社会科学の立場からの検討が必要であり、さらに価格、コスト面などの経済面での評価も要求される。たとえば、既存の医薬品などと比べて、遺伝子組み換え技術によって遥かに安価にインシュリンインターフェロンなどがつくられるようになっているが、これは明らかに従来品よりも有用であり、遺伝子組み換え微生物などを用いることによる懸念を克服するような結果になっている。もちろん、有用性の認定が効果的であるためには公的な検証機能や指導、監督、監視機能などが正常に働いていることが必須の条件になることはいうまでもない。将来的に、そのような商品の安全性、信頼性などについての秩序形成にかかわる国民的なコンセンサスが、どのようにつくられるかが、たえず問われ続けることになるだろう。