医薬翻訳サービス

薬理学、生化学、統計学に精通した翻訳士が対応いたします

 日系製薬企業の米国進出:海外展開時のビジネス形態

 

 日本の製薬企業が、海外特に米国市場に進出する際には、ビジネス形態を選択する必要があります。大きく分けて、ライセンスアウト、共同販売、自社販売の3つの形態があります。ライセンスアウトすれば、自社による開発費の負担がなくなります。ライセンス先によって開発が成功し、製品が販売されればロイヤリティ収入が入ります。最もリスクが少なく収益を実現する方法です。

 共同販売では、海外に自ら拠点を持って事業を行うため、先行投資が発生し、その代わり成功したときの収益は人きくなります。また、海外での事業上のノウハウや、製品を拡販するうえでの提携先企業のブランドカなどが事業の成功確率を高めるという面もあります。最後に自社販売は、先行投資の負担が最も大きく、成功した時の利益も最大になるハイリスク・ハイリターンのモデルです。

 企業がどのモデルを選択するかは、財務力、進出国での小業ノウハウや企業のブランドカ、製品の競争力を鑑みて決めることになるでしょう。過去の日本企業においては、ライセンスアウトから共同販売、自社販売へとステップアップしてきた経緯があります。

 海外展開にあたって最初の製品はライセンスアウトすることが多かったようです。ライセンスアウトによって、収益をあげ財務力を強化しつつ、市場動向を学ぶことができます。

 特に、海外に初めて進出する際には、この先行投資期間が長く赤字額も大きくなりがちです。米国ではビジネスの規模が大きいために、先行投資も大きく、その代わりにピーク時に実現する売上高、利益が大きくなります。日本企業が海外に進出する際には、製品の発売の前に拠点を設置しその運営全般のコストが発生しますし、その製品の開発費もかかります。これらも合わせるとビジネスが黒字化するまでに膨大な膨大な先行投資が発生することになります。

 三共(現第一三共)は1985年にコレステロール低下剤メバロチンブリストル・マイヤーズスクイブに、山之内製薬(現アステラス製薬)は1981年に抗潰瘍剤ガスターメルクに、1993年に排尿障害治療薬ハルナールをベーリンガー・インゲルハイムに、それぞれライセンスアウトしました。

 共同販売の例としては、エーザイアルツハイマー認知症治療薬アリセプトファイザーと、抗潰瘍剤アシフェックスでジョンソン・エンド・ジョンソンと、それぞれ販売提携しました。武田薬品工業は、1985年にアボット・ラボラトリーズとの間のジョイントベンチャーとしてTAPファーマシューテイカル・プロダクツを設立し、前立腺がん治療薬ルプロンと抗潰瘍剤プレバシッドを発売しました。なお、プロフイット・シェアリングの比率として、アリセプトの場合は、エーザイファイザーで50 : 50、アシフェックスの場合は、エーザイジョンソン・エンド・ジョンソンで40 : 60、降圧薬ベニカーの場合、第一三共とフォレスト・ラボラトリーズで55 : 45と推測されています。

 自社販売の最初の成功例としては、藤沢薬品工業(現アステラス製薬)の免疫抑制剤プログラフがあります。当時の藤沢薬品工業にとっては、新たな領域での海外販売を自社単独で立ち上げることになりました。臓器移植というニッチな領域であったことと、薬の性質が優れていたことが、自礼艇開を可能にしたと思われます。当初は販売提携から入り、一定期間の後に自社販売へ以降する契約をあらかじめ結ぶ形もあります。武田薬品工業は糖尿病治療薬アクトスで当初イーライ・リリーと提携しましたが、2006年には単独販売に移行しました。三共(現第一三共)はベニカーでフォレスト・ラボラトリーズと販売提携しましたが、2008年から単独販売に移行する予定です。

 自社販売、共同販売の形態をとった場合、収益化の目安として、単年度黒字が3年目、累積損失の解消が5年目と言われています。そして、その薬剤による収益化か見えた時点で、株価は大きく反応しています。逆に言えば、株式市場の見方として、海外収益は日本の製薬企業にとって非常に重要な位置づけにあるとも言えます。

 これまで、研究開発の経緯や、製造販売の方法によって、製品ごとに収益構造が異なることを見てきました。そして、その製品がライフサイクルのどのステージにあるかによって、利益の出方が決まってきます。製薬企業の業績は、様々な売上規模、ライフサイクルの段階、開発の経緯、製造販売の方法によって収益構造が異なるビジネスがミックスされ、集計された結果として、全社の業績が形作られていると考えることができます。上場している製薬企業各社は、主力製品の売上高などを投資家向け情報として公表しています。これらを分析することによって、製薬会社の経営状況について相当程度理解を深めることが可能です。