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武田薬品工業

1781年(江戸時代、天明元年)、初代武田長兵衛が当時の日本の薬取引の中心地であった大阪道修町にて薬問屋として営業を開始したのが武田薬品工業の始まりです。1871年には、西洋由来の薬[洋薬]の輸入を開始、1895年には、大阪に工場を建設し、製薬メーカーとなりました。

 第二次世界大戦後には、戦争被害が少なかったこともあり、抗生物質ペニシリンの生産を開始、1952年にはビタミンB1誘導体アリナミンを発売し、戦後復興時に蔓延した伝染病や栄養状態の低下を解消するという当時最大のニーズに対応しました。現在、一般向けの商品としてのアリナミンやベンザブロックなどでおなじみです。日本が経済復興を遂げた1980年には抗生物質パンスポリンを発売し大型製品に育成しました。

 武田薬品工業の現在の成功につながったのは、海外で売れる製品を生み出したことにあります。日本の製薬企業としては国際化に先行しており、1985年には米国でアボット・ラボラトリーズとの合弁会社TAPファーマシューティカル・プロダクツを設立、同年前立腺がん治療薬ルプロンを発売しました。 1989年に投与回数をそれまでの毎日から1ヶ月1回に改良した徐放製剤を発売したことで、売上が本格的に拡大しピーク時の2002年には8.77億ドル(1,052億円)の年商に至りました。

 1995年には、抗潰瘍剤プレバシッドを発売し、ピーク時の2002年には31.57億ドル(3,908億円)と米国でも単品売上高で8位の製品となりました。一方、自社開発品としては、降圧薬アタカンドがライセンス導出先の英アストラゼネカから1997年に欧州で発売され、2006年には欧米で11.1億ドル(1,332億円)を売り上げました。ルプロン、プレバシッド、アタカンドと、末端市場での売上は1,000億円を超えて大型化したものの、ビジネスとしては合弁や販売提携のパートナーに利益の相当部分を取られてしまう形態でした。

 そこで海外4品目となる糖尿病治療薬アクトスに関しては、米国に全額出資の医薬品販売会社、武田ファーマシューティカルズ・ノース・アメリカ(以降、TPNA)を設立し、自社主導の販売に乗り出しました。当初は糖尿病領域に強みを持つ米イーライ・リリーの共同販促を受け、2006年には21.8億ドル(2,616億円)の売上に達しました。 2006年からイーライ・リリーの支援から独立し、自社単独でのビジネスを確立しました。 TPNA社では、アクトスに加え2006年に不眠症治療薬ロゼレム、便秘薬アミティーザを発売し、自社単独での販売を行っています。

 このように、市場規模が大きく薬剤費の抑制政策が相対的に緩やかな米国をはじめ、海外市場でビジネスを拡大することで、日本では他社の追随を許さない利益水準と研究開発費の規模を持つ製薬企業に飛躍しました。 2006年度の売上高は1.3兆円、研究開発費は1,933億円、経常利益は5,850億円。経常利益は国内2位に3倍以上の差をつけてのトップです。世界売上でも2006年には16位と一定の存在感を示すに至っています。

 中期的な見通しを語るうえでは、何よりも海外売上を牽引してきた製品の特許期限が近づいている点が指摘されます。プレバシッドは2009年、アクトスは2011年に特許が切れて、ジェネリック薬との競合のために急速に市場シェアの大半を失うと予想されます。この業績へのインパクトを相殺するために、現在開発中の新薬を首尾よく上市し、新しい成長の柱を築くことが求められます。また、2006年度末時点で手元流動性(現預金と短期保有の有価証券の合計)が1.8兆円と潤沢であり、M&Aや製品の販売権のライセンスにこれを充てることで、次世代の成長を担う新薬を獲得することも考えられます。

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