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ぜんそくの子供と運動・トレーニング

 

 

 

 なぜ運動すると発作がおこりやすいのか

 だれしも気持ちよく動き、走り、スポーツをしたいと思うものです。ぜんそくの子も同じです。ところがぜんそくの子どもは運動をすると発作がおきやすくなります。運動の直後に、セキやぜんそく発作がはじまるのを運動誘発ぜんそく(EIA)といいます。急に走ったり、小さい子では泣いたり大声をだしたりしたあとにおこることもあります。そのためぜんそくの子どもはせっかくはしめたスポーツを途中でやめてしまったり、運動嫌いになることも少なくありません。

 それでは、どうすれば運動ぜんそくにならずにすむのでしょう。また、どのような運動がぜんそく児によいのでしょうか。

 運動をすると、呼吸が急激に増加します。そのため粘膜の表面が冷えたり乾燥したりして、敏感になった気管支の神経が反射的に気管支を細めるためです。その結果、ぜんそくの発作がおこりますが、たいていは一五~三〇分休むと落ちついてきます。

 この運動誘発ぜんそくは重症度に比例しておきますから、運動をさせてみてぜんそくの重症度を判定するという検査も以前からおこなわれています。

 


 発作のでやすいマラソン、でにくい水泳

 運動のなかでもっとも発作がおこりやすいのは長距離を走る運動です。これは時間と距離が長くなればなるほどおこりやすくなります。ですからマラソンなどは発作がおこりやすいのです。同じ陸上競技でも短距離走は運動が途切れるので誘発ぜんそくがおきにくいといわれています。私も積極的ゼロレペル作戦でぜんそくを治療して、県代表になった子どもを三人もみています。

 野球やサッカー、バスケット、テニスなどはマラソンとくらべると運動誘発ぜんそくがおこりにくいといえます。

 もっとも運動誘発ぜんそくがおこりにくいのは水泳であるのはみなさんご存じだと思います。この理由はよくわかっていませんが、湿った空気を吸うためではないかといわれています。ぜんそくをなおすために水泳をはじめて、オリンピックの選手になった人はたくさん知られています。

 

 

 どうすれば運動誘発ぜんそくを防げるか

 運動誘発ぜんそくをおこさないためのいくつかのポイントをあげてみます。

①準備体操(ウォーミングアップ)を十分に。

 準備体操をしないで急に激しい運動をするととたんに発作がおこってしまいます。軽いジョギングやラジオ体操など、軽くこなせるていどの運動を五分くらいしてから、本格的な運動をはじめましょう。

②運動量を少しずつふやします。

 運動する時間や激しさを、ピークの三分の一くらいからはじめ、慣れたら徐々にふやしていきましょう。みんなとちがう運動メニューになりますから、先生や友達が理解して、手伝ってくれるとうまくいきます。発作のあとや軽いゼーゼーがつづいているときも同様に、運動量をずっと減らしてから開始し、徐々にふやしていきます。

③少しずつでも運動をつづけると鍛練効果があります。

 運動誘発ぜんそくは、運動をつづけていくうちに、同じていどの運動をしても次第におきにくくなってきます。ぜんそく児でなくても、運動をつづけると肺や心臓の機能はどんどんよくなりますので、長期入院するような子でも、運動療法をすると瞬く間にかなりの運動ができるようになります。

 ふつうの学校に通っている場合も、最初はみんなについていけずに辛い思いをするかもしれませんが、目標を作ってあげれば一~二ヵ月でかなり運動できるようになります。継続は力なりです。もちろん、運動をつづけるあいだ、なるべく発作がゼロレベルで継続するよう注意する必要があります。

④冬はマスクを着けて運動する。

 冬場の寒い時期は、通学などで長時間歩くだけで発作になることもあります。少々運動しづらいのですが、マスクをすると運動誘発ぜんそくが少ないというデータがでています。

⑤適切な予防薬を使う。

 以上のことに注意を払っても、かならず運動誘発ぜんそくがおきる人は、主治医に相談して適切な予防薬を処方してもらい、運動前に使用するのがいいでしょう。

 吸入抗アレルギー薬のインタールは、運動前に吸入すると予防効果がいいことで有名です。交感神経系の気管支拡張剤の経口薬もあるていど効果があります。もっとも効果があがるのは吸入性交感神経系の気管支拡張剤を(ンドネブライザーで吸入するものですが、医師の指示を十分守って使用しましょう。

 


 どんな運動がよいか

 ぜんそくには水泳が一番いいといわれています。ぜんそくで水泳選手の人はたくさんいます。アトランタオリンピックで、アメリカの選手はぜんそくを治療しながら金メダルに輝いたことは、記憶に新しいところです。

 しかし、どうしても泳ぎができなかったり、嫌いだったり、近くによいプールや指導者がいない場合もあります。また、アトピヽ-性皮膚炎やアレルギー性鼻炎の場合も温水プールの消毒剤で悪化してしまうことがありますから、すべての人に水泳をおすすめできるわけではありません。

 現在は、以前と違い、多くの種目のなかから本人の興味のあるスポーツを選んでいいと思います。最近は最初から重症でまったく運動ができないという人は少ないので、いろいろなスポーツができる機会が多くなっています。主治医と相談しながらではありますが、すべてのスポーツから選ぶことが可能です。

 そのさい大事なことは、運動誘発ぜんそくがほとんどでないスポーツで、本人が運動することのおもしろさ、楽しさを感じられる種目、また心肺機能を少しずつ高めてゆけるもの、最後に症状により運動量を調節できるような、まわりの人の理解が得られやすいものならいうことはないでしょう。

 

 

 長期入院児がおこなっている運動療法

 長期入院中のぜんそく児がおこなってきたスポーツは、重症者が多かった以前は、ぜんそく体操や、腹筋体操、背筋体操など呼吸筋を鍛える目的のものでした。しかし、これは長つづきせず、退院するとすぐにやめてしまう人が少なくありませんでした。

 その後、入院児が興味をもち、退院してからもつづけられるスポーツということで、ジョギング、ドッジボール、水泳、バドミントン、卓球、バレーボール、テニス、縄跳び、けん玉などを取り入れておこなってきました。

 そのほか外来患者さんがつづけているスポーツは、陸上競技、ソフトボール、野球、テニス、弓道などでレギュラー選手になっている人もいます。ただ、最初から選手をめざすのではなく、スポーツができる楽しさを味わうことからはじめてください。

 また、こんな統計があります。

 以前なら入院をしなければならないような重症の患者さん七十数人に、積極的ゼロレベル作戦を導入してアンケートをとったところ、そのなかの九五パーセントの人は学校の体育がふつうにできるようになり、さらに五五パーセントの人は運動クラブに入って活動しているという結果がでました。

 このように、ひどい発作がつづいて体力が極端におち、運動できないという子どもは、今はほとんどいなくなっています。発作がなくふつうの子どもと同じような生活ができ、スポーツをやりたい子どもはできるように、これが新しいぜんそくの治療だと考えています。

 

 

 自律神経を強くするトレーニング

 昔から、ぜんそくの子どもにすすめられる鍛練療法として、薄着や水かぶり、乾布摩擦などの皮膚トレーニングがあります。これは皮膚の自律神経を刺激して、カゼをひきにくくぜんそくをおこしにくくするといわれています。最近、この効果を科学的に証明しようとする研究もはじまっています。

 薄着は体温の調節能力を高めるので、ぜんそくの子どもだけでなく、みなにおすすめしたいものです。人間には外気温度を肌で感じて、体温の発散を汗腺や毛根で調節する働きが備わっていますので、薄着になれると、夏にも冬にも強い子になります。

 夏にクーラーのなかばかりにいると、よけい発作がおきてしまいます。汗を流すほど長生きするといわれていますので、なるべく汗をかくような生活をしましょう。

 また、冬は寒いとすぐに鼻水をだしてカゼをひくので厚着をさせがちですが、極端な薄着は必要ないとしても活動的にすごせるていどの薄着を心がけましよ

 水かぶりは薄着と同じように、冷たい水が皮膚の汗腺や毛根を直接開閉させて、皮膚の温度調整がうまくいくように鍛えるものです。外来の患者さんでやった人はたしかに効果があったようで、カゼをひきにくくなります。

 水かぶりの方法は、お風呂に入ってあがる前にやります。季節にもよりますが最初は足首の下からはじめ、二~二日ごとにひざから下、腰から下、そして全身へ水をかけるようにします。寒い時期にはお湯でぬるくします。少し冷やっとする温度差が大事なのです。家族いっしょにやると子どももいやがらずにやるでしょう。

 乾布摩擦は、確かに効果があるようですが、どうも長つづきする人が少ないのです。やりすぎて皮膚を傷めたり、アトピー性皮膚炎が悪化する人もいて、もうひとつすすめられません。

 好きなスポーツで汗を流し、シャワーをあびる方がずっと無理なく、楽しく、健康にいいかもしれません。