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小児ぜんそくによる入院について


 小児ぜんそくで入院する場合は、大きくわけて二通り考えられます。一番目は発作はさほど重症ではないけれど、気管支炎や肺炎、脱水症をおこしている場合です。年齢が小さい場合は脱水だけでも重要な症状です。たとえ発作が軽くても長引いたりひどくなったりすることが多く、とくに最近入院する乳幼児のぜんそくではこの状態が多いようです。二番目は本当に発作が重症で、呼吸困難が強く外来では対処できない場合です。

 一番目の場合は、入院するとまず点滴が開始されます。最近は乳幼児の動きを制限せずに上手に点滴を固定できるようになっています。点滴には水分と、適当な塩分、糖分が入っていますので、しばらく食事がとれなくても安心です。脱水症状が強い場合は点滴の組成が考慮して使用されます。同時に検査がおこなわれます。必要な場合はレントゲン検査もおこなわれます。また点滴にはネオフィリン(ネオフィリン製剤の注射薬)が体重から計算して混合されます。気管支炎や肺炎がはっきり認められる場合や、発熱がともなう場合は、抗生物質も時間ごとに入られます。ネブライザー吸入も一日三~四回するのがふつうです。症状の改善がみられない場合、ステロイド剤の使用も考えます。

 二番目は本当に重症で呼吸困難が強い場合です。何よりもまず、体内の酸素が欠乏していないか検査します。呼吸状態や顔色をみたり、血液や器械でからだのなかの酸素濃度を検査し、酸素を投与するかどうかが判断されます。普通の吸入がおこなわれる場合もありますが、最近はイソプロテレノールという即効性のくすりを酸素とともに連続で吸入する持続吸入という方法がおこなわれるようになり、重症発作もはやく楽になるようになりました。

 発作が重症な場合は呼吸状態を十分監視しながら点滴を入れ、さまざまな処置がとられます。よくなってくるとくすりが減らされ、食欲がでてくると点滴も減量し、やがて中止します。しばらくは経口のくすりが出され、やがて退院します。

 


長期に入院してなおす方法はどのようなものですか。

 長期入院療法は、施設入院療法ともいいます。これはどこの施設でもできる方法でなく、全国所々にある専門の病院に入院することになります。

1 長期入院療法が必要な患者さんの症状

 ①発作が重症で外来での治療で効果がなく、何度も救急外来を受診する。②重症のため体力が大きく低下し、成長その他に障害がみられる。③学校欠席が多く学習が遅れている、④家族が子どものぜんそくのため、肉体的精神的に疲労困ぱいしている。

 このなかのいくつかが重なった場合、考慮されます。主に学童から高校生のせんそく児が対象になりますが、ひどい場合は幼児でも受け入れてくれるところもあります。以前は親子分離がぜんそくをなおすといわれた時代もありましたが、―章にも書きましたようにぜんそくはもはや母原病ではなく、発作のくり返しによる気道炎症と、それによっておきるさまざまな悪循環を断ち、健康な生活をとりもどすための入院です。

2 入院してすること

 長期入院施設では最低一ヵ月以上平均八ヵ月~一年間、入院しさまざまな治療を受けます。学校はそのあいだ一時転校になり、病棟から併設の養護学校か、最寄りの学校へ通学しながら治療や検査をつづけます。くすりによる治療のほかに、運動療法や呼吸機能訓練、長い病気のため心理的に影響を受けている人には心理的ヶアもおこなわれます。運動会や遠足、修学旅行や季節季節の行事もふつうの学校と同じようにあり、家族が参加できる行事もあります。

3 入院費用は

 入院費は、食費と学校の費用、おこづかいをのぞいて手つづきをすれば補助を受けられます。

4 病棟での生活

 病棟では学校から帰ったら昼間はふだん着で、友達と遊んだり、しゃべったり、食事をしたり入浴したりとふつうの生活をします。起床から消灯まであるていどの決まりや役割があります。欠席が多く自分のペースで生活してきた人には最初はきついかもしれませんが、慣れてくるとからだもしやきっとして親御さんが驚くほど変わってくる子どももいます。

 最初述べたような楽しい病棟行事や学校行事がありますが、反面、思春期やそれまで欠席が多かった子どもたちが急に同じ部屋で寝泊まりするわけですからときにはトラブルもないわけではありません。

 月何回かは外泊が許可され、自宅に帰って家族との団らんが待っています。最近では治療法もよくなり、病棟で発作をおこすこともまれになりました。重症な人でも入院してしばらくすると、見違えるようによくなる患者さんがほとんどです。

5 欠席のため学習が遅れている子どもは

 たいていの養護学校では学習の習熟度診断をして習っていないところから指導してもらえると思います。症状が回復し、体力的にも余裕ができるとどんな子どもも以前よりは意欲を見せます。養護学校での学習で将来の夢を実現させた人を香川小児病院でも大勢見てきました。

6 退院

 症状が見違えるようによくなり、体力がついて地元に帰って生活していく自信が本人にみられるようになったら、主治医と学校の先生、家族、本人が相談のうえ、試験外泊や試験登校をした退院になります。最初、寂しさや不自由さはありますが、同じ病気で苦しんだ仲間ができ、自立心や克己心が培われて、長い人生に役に立つことが多いものです。

7 これから入院を決定するには

 入院するかどうか決定をするには、まず事前のかかりつけの医師にきくと地理的条件や実績から最適の長期入院施設を紹介してもらえると思います。一度は必ず家族と施設に出かけて担当の先生の治療方針や、施設および設備を見学させてもらい、それらを総合して判断し決定するとよいでしょう。とくに欠席が多く、家にこもりがちになって意欲や希望を失いかけている子どもさんには、ぜひすすめたいと思います。