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ガン物質を吸着して速やかに排泄する乳酸菌

 

 腸内菌のなかには発ガン物質を吸着して便といっしょに体外へ排泄する作用を持つものがいることが試験管内の実験で確かめられています。

 ヘテロサイクリックアミンに対するカゼイ菌やビフィズス菌の吸着率。同様の作用はセルロース(植物の細胞膜の主成分)などの食物繊維にも あることが知られていますが、Glu-P1を除いて、食物繊維の吸着作用に劣らぬ高い吸着率を示しているのがおわかりでしょう。

 早津教授らは便中に排泄されたヘテロサイクリックアミンを直接、測定してはいませんが、BLP服用後の便を調べたところ、興味深いことに、投与したカゼイ菌と同じ乳酸菌の仲間であるビフィズス菌数がふえていたということです。

 これらの事実から、尿中のヘテロサイクリックアミンの低減は、腸内でカゼイ菌がみずからヘテロサイクリックアミンを吸着、排泄するとともに、ビフィズス菌をふやすように働いてその吸着を促し、体内への吸収が抑えられた結果とみることができるわけです。

 腸管粘膜を刺激したり、腸管から吸収されて体内をめぐる発ガン物質のリスク(危険)を減らすにはカゼイ菌が有効だといえそうですが、公平を期して図15をもう一度ながめると、大腸菌、クロストリジウム菌などの腐敗菌も乳酸菌と同様の吸着率を示していることがわかります。この点だけをみれば、腐敗菌が活発に繁殖する場合にも発ガン物質の吸着排泄効果を期待できるように思えます。しかし、腐敗菌が他方でインドール、フェノール、二次胆汁酸などの発ガン物質をせっせとこしらえていたことを思い出せば、この弁護はすぐにくつがえることがおわかりでしょう。


 乳酸菌はまた、腐敗菌によってつくられた二次胆汁酸の害を減らすことも明らかにされています。

 乳酸菌優勢の腸内は酸性に傾き、pHが低下すると考えられます。pHの数値は7・O前後が中性、それ以下だと酸性、それ以上だとアルカリ性を表します。ラット(ネズミ)の腸管に二次胆汁酸(デオキシコール酸)を含んだ溶液を灌流させた実験では、二次胆汁酸による腸管粘膜への障害作用が圉6・5よりも固5・5と酸性度の高い環境下のほうが低くなることがわかりました。

 二次胆汁酸にはどうやらphが低下すると「不溶化」つまり水にとけなくなる性質があり、このために腸管粘膜を傷つける作用が低減するようです。

 腸内菌叢を乳酸菌優勢に改善することは、二次胆汁酸をつくる腐敗菌の働きを抑え、またつくられた二次胆汁酸を害の少ない形に変えるというこの二つの理由で、二次胆汁酸による大腸ガンのプロモーションを抑制するものと考えられています。

 

菌のつくる乳酸には便秘を解消する働きがある

 乳酸菌のつくる乳酸はこのように腐敗菌を抑えるだけでなく、発ガン物質の害を低減させることにも役立っていますが、もう一つつけ加えておいてよいと思われるのが、乳酸による便秘解消効果です。

 便秘をすると、便が腸内にとどまる間に水分が吸収され、便に含まれる発ガン物質の濃度が高まります。高濃度の発ガン物質を、それも長時間、腸管粘膜に作用させてしまうのが便秘なので、便秘を解消して発ガン物質をできるだけ速やかに体外に排泄してやることも大腸ガンの予防のうえでたいせつなこととされています。

 兵庫医科大学第四内科のグループは、慢性便秘に悩む患者さん25名の腸内菌叢を調べ、ビフィズス菌の減少が顕著だったことからビフィズス菌を投与したところ、過半数に症状の改善がみられた、と報告しています。

 このような効果は乳酸が腸管を刺激して蠕動運動(消化物を上から下へと送る運動)を促すためであると考えられています。