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表在性膀胱ガンの約80%は再発を繰り返す

 

 

 膀胱は腎臓でつくられた尿を一時的にためておく袋状の臓器で、大人で300~500mgほどの容量があり、袋の内側が粘膜、次に粘膜下組織、その外側を筋肉の層が包んでできています。

 左右に一対ある腎臓は血液を濾過して体に必要なものと不要なもの、有害なものをふるい分け、1日に1.2~1.5mlほどの尿をつくっています。つくられた尿は、長さ25cmほどの2本の尿管を通して、腎臓から膀胱に送られます。

 膀胱の底にあたる部分は膀胱三角と呼ばれる二等辺三角形をしており、その2点に尿管が、もうI点には尿道が開口しています。膀胱にためられた尿は、男性で20cm、女性で4cmほどのこの尿道を通って体外に排泄されます。

 膀胱の筋層は縦横に不規則に走り、これが収縮すると尿を排泄させるように働き、排尿筋と呼ばれています。尿がたまると、膀胱が収縮するとともに、尿道をとり巻いている外尿道括約筋がゆるみ、尿道を通って体外へ排泄されます。トイレをがまんするなどの排尿の調節は、随意筋(意思で動かせる筋肉)である外尿道括約筋の働きによって行われます。

 この膀胱という袋の内側で尿に接している粘膜、ないしは粘膜下組織にガンがとどまっているのが表在性膀胱ガンで、その外の筋層にまで達しているのが浸潤性膀胱ガンです。

 専門的には、膀胱ガンをその浸潤の程度(深達度)によってTis~T4に分類し、Ta~TIを表在性膀胱ガン、T2~T4を浸潤性膀胱ガンとしています。Tisは上皮内ガンと呼ばれ、一見、膀胱内にせり出していませんが、将来深く浸潤する可能性の高い表在性膀胱ガンとして別に分類しています。

 同じ膀胱ガンでも、表在性か浸潤性かによって、治療法やその後の患者さんの生活、予後(経過)にかなりの差が出てきます。

 表在性膀胱ガンの多く(特にTa)は内視鏡でみますと、表面に凹凸のあるガンの塊がちょうどブロッコリーなどの花野菜のように膀胱の内腔に向かってふくらみ(乳頭ガンと呼ばれます)、増殖しています。こうしたタイプのガンは転移も少なく、花野菜をつむように、ガンの塊を茎の部分から根こそぎ内視鏡で切除することができますので、患者さんの膀胱を摘出せずに残すことが可能です。

 一方、浸潤性膀胱ガンは、膀胱の内腔にせり出した部分は小さくみえても、超音波検査やCTなどの画像診断にかけると、筋層や膀胱のまわりの脂肪組織にまで深く根をおろしているのがみつかります。このタイプは、やがてガン細胞がリンパ管に入ればリンパ節転移をつくり、血管に入れば遠隔転移(遠くの臓器への転移)となる危険がありますので、手術でガンをとり残さないためには膀胱を周囲の組織や器官とともに摘出しなければならなくなります。

 幸い、膀胱ガンの約80%は表在性膀胱ガンで、約20%が浸潤性膀胱ガンです。

 しかし、表在性膀胱ガンで注意しなければならないのは、数力月の間隔をおいて再発を繰り返すケースが非常に多いことです。このようなケースは表在性膀胱ガンの約80%を占め、再発を繰り返すうち表在ガンの10%以上がしだいに悪性化を強め、浸潤ガンに進展します。そこで、表在性膀胱ガンの治療では、再発をいかにして抑えるかが大きな課題となってきます。

 また、再発を抑えられなかった場合でも、再発してくるガンの悪性化を防ぐことができれば、そのつど内視鏡で切除することによって、ガンを長期にわたってコントロールすることが可能です。やや専門的になりますが、その際、治療上の重要な指標となるのが、ガンの組織学的な悪性度です。

 悪性度は、ガン組織を顕微鏡でのぞいて、細胞異型度と構造異型度の二つの観点から判定します。細胞異型度は、個々のガン細胞の大きさや形、細胞内の細胞質と核の大きさの割合など、正常細胞からの隔りの程度を、軽度異型(1)・中等度異型(2)・高度異型(3)の3段階であらわしたものです。また、構造異型度は、細胞の配列、並びぐあいの乱れを意味し、同様に3段階であらわされます。それぞれ1~3で評価された細胞異型度と構造異型度の組み合わせにより、ガンの悪性度はGI~G3の3段階に分類されます。

 悪性度の低いガンは限局性(ひと塊となって局所にとどまる)の増殖をし、増殖のスピードも比較的ゆるやかで、転移が少ないのに対して、悪性度の高いガンは瀰漫性(広がり、はびこる)の増殖をし、増殖が速く、転移しやすいため予後(経過)が悪くなります。

 表在性膀胱ガンの患者さんの生存率を、悪性度別にみたものですが、G3はGIやG2にくらべ、予後(経過)が非常に悪いことがわかります。このことは、同じ表在性膀胱ガンであっても、悪性度がGIやG2のガンは膀胱を摘出せず保存する手術でコントロールできるのに対して、G3のガンの場合には患者さんの生命を救うためにはいずれ膀胱をとり去る根治的手術をも検討しなければならなくなることを示しています。

 最初にガンを引き起こしたとき(初発時)にGIやG2と判断された患者さんのなかからも、再発時にはGI↓G2、GI↓G3、G2↓G3のように悪性度が進むケースが出てきます。そこで、表在性膀胱ガンの治療では、仮に再発したとしても、その再発ガンの悪性度が進むのを抑えるような予防的治療が重要になってきます。

 ある医学グループは乳酸菌製剤「BLP」に、表在性膀胱ガンの再発を防ぎ、同時に再発ガンの悪性度が進むのを防ぐ効果があることを実際の治療によって明らかにしました。表在性膀胱ガンの再発を抑える治療として、これまではBCGなどの薬剤の膀胱内注入療法が行われてきましたが、この方法はカテーテルと呼ばれる細い管を膀胱内に挿入するために、痛みを伴います。また注入後、多かれ少なかれ膀胱炎を起こすため、患者さんは頻尿や疼痛に悩まされます。しかも必ず定期的に、頻回に通院しなければなりません。

 一方、BLP療法は飲み薬を服用するだけなので、痛みも副作用もなく、定期的な膀胱鏡検査は必要ですが、頻回の通院は必要ありません。したがって、患者さんの「クオリティ・オブ・ライフ(QOL=生活の質)」の向上に資するところが大です。