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膀胱ガンの原因物質:タール、ニトロソアミン、ヘテロサイクリックアミン

 

①タバコのタール

 タバコのタールには現在知られているだけで4000種類もの化学物質が含まれ、自動車の排気ガスにも含まれるベンツピレン、すぐ後で述べるニトロソアミン、また職業性膀胱ガンの原因物質として見いだされた芳香族アミンなど、そのI%以上に発ガン性が認められています。特に2-ナフチルアミンなどの芳香族アミンは臓器特異性(特定の臓器、ここでは膀胱にだけ作用する性質)が職業ガンの例で証明されていますので、タバコを吸うと、これらの物質がイニシエーターとして膀胱粘膜に作用する可能性があります。

 さらに注意を促したいのは、タバコのタールがイニシエーターのほかにフェノールなどのプロモーターも含んでいる点で、タバコの煙を吸い込めば、イニシエーターとプロモーターを同時に体内にとり込むことになります。これらの発ガン物質の少なくとも一部が尿中に排泄され、膀胱粘膜に作用していることは、タバコを吸うと約4時間後をピークに尿中の変異原性が高まることからも明らかです。

 平山雄博士らの調査によれば、肺ガンなど呼吸器系のガンと食道ガンなど上部消化器系のガンに次いで、膀胱ガンに喫煙との高い相関がみられました。

 主流煙(フィルターを通して吸われる煙)にくらべ、副流煙(点火部から直接出る煙)はベンツピレンを3倍、2-ナフチルアミンを39倍、4-アミノビフェニー’ルを30倍も多く含むことが知られており、夫の吸ったタバコの煙を妻が吸い込む受動喫煙の害も指摘されています。


②ニトロソアミン

 酸素に窒素が2個くっつき、2本の手が伸びている簡単な化学構造をしている物質の総称ですが、2本の手に何がつくかで数百種類におよぶニトロソアミンが生まれます。このうちジメチルニトロソアミンは肺ガンや肝臓ガン、ニトロングアニジンは胃ガン、ジメチルヒドラジンは大腸ガン、ブチルブタノールニトロソアミンは膀胱ガンというように、ほとんどの部位のガンを動物に誘発することができます。

 これらのニトロソアミンは強力なイニシエーターであると同時にプロモーターとしても作用し、ドイツで行われた実験によれば、テストした60種類のニトロソアミンのうち実に51種が強い発ガン性を示したということです。

 1969年に同じドイツで、それ自体は発ガン性のない二級アミンと亜硝酸を与えたラットの胃のなかでニトロソアミンが生成することが証明されて以来、事態は騒然としてきました。二級アミンは魚の干物やたらこ、すじこなどの魚卵に含まれ、また、腸内の腐敗菌によってタンパク質からつくられるアミンのなかにもこの二級アミンが含まれています。一方、野菜や飲料水に含まれる硝酸塩は、口、胃、腸、膀胱などのなかにいる細菌によって容易に亜硝酸に変化します。亜硝酸(塩)はまた、ハム、ソーセージ、ベーコンなどの食肉加工品に発色剤、防腐剤として添加されています。二級アミンや亜硝酸を体内にとり入れることはほとんど避けようもなく、そうなると、私たちの胃のなかでもニトロソアミンが生成している可能性があるのです。この反応は人間の体内で証明されたわけではないものの、酸性のもとで起こるため、胃袋はニトロソアミンの合成の場所として好適で、胃ガンヘの関与が強く疑われています。また、ある種の腸内菌は中性に近い環境下でもニトロソアミンを合成することが明らかにされており、大腸ガンヘの関与も考えられます。

 膀胱ガンとの関係を調べた実験では、シロネズミに二級アミンと硝酸塩のいずれか一方を与えても尿中からニトロソアミンは検出されませんでしたが、これらを同時に与えるとニトロソアミンが検出されました。また、膀胱炎の原因となる細菌の多くは尿中の硝酸塩からニトロソアミンをつくることが証明されており、人間においても、慢性膀胱炎が長年続いた後、膀胱ガンになった患者さんの尿からニトロソアミンが検出されています。

ヘテロサイクリックアミン

 アミノ酸を加熱したときに生じる化学物質で、肉や魚の焼け焦げだけでなく、肉を長時間加熱して得たブイヨン(スープストック)やソースなどにも含まれています。この物質を塊にしてマウスの膀胱に埋め込んでおくと、膀胱ガンができることが確認されています。