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膀胱癌の原因物質:インドール、OPP、BHA、サッカリン、トリハロメタン

 

インドール

 タンパク質が腸内菌の働きで代謝され、生成する物質です。ある種の芳香族アミンと一緒にハムスターに与えると、インドールがプロモーション作用を発揮して膀胱ガンを促進することがわかっています。


⑤OPP(オルトフェニルフェノール)、OPPナトリウム

 白カビが生えるのを防ぐため、輸入物のレモン、オレンジなどにスプレーされるポストハーベスト(収穫後)農薬です。わが国には農薬を作物の収穫後に使用する習慣がないため、食品添加物(防カビ剤)に指定されています。ラットの膀胱にプロモーターとして作用することが知られていますが、OPPを大量に食べさせたラットに膀胱ガンが発生することから、弱いながらイニシエーションの作用もあるようです。


⑥BHA(ブチルヒドロキシアニソール)

 世界各国で使用されている酸化防止剤で、バターなどの油脂類、冷凍魚介類などに添加されます。ラットの膀胱ガンのプロモーターとして作用しますが、反面、乳ガン、大腸ガン、肝臓ガン、肺ガンなどの発生を抑えるという動物実験のデータがあります。天ぷら油などを使い古すと異臭を放つようになりますが、これは油脂が酸化して過酸化脂質が生成するためです。過酸化脂質は乳ガンなどのプロモーターとして作用する可能性があります。BHAの添加により過酸化脂質の生成が抑えられるので、その使用については議論の分かれるところです。


サッカリンサッカリンナトリウム

 かつて人工甘味料として盛んに使用されたチクロは動物に膀胱ガンをつくるとされ、1969年以来使用が禁止されていますが、同じ人工甘味料で現在も広く使用されているサッカリンも膀胱ガンのプロモーターとなることがラット(ネズミ)で確認されています。サッカリンは他の発ガン物質を膀胱粘膜の細胞に透過しやすくします。イニシエーターとしての作用は弱く、ラットにサッカリンだけを大量に与え続けても一生の間には発ガンせず、2世代にわたる投与でやっと膀胱ガンが発生します。

 糖尿病の人は砂糖を控えるためにサッカリンを用いますが、ラット以外の動物に膀胱ガンをつくる証拠がないことから、人間の膀胱ガンに関与しているかどうかは微妙なところです。

 

トリハロメタン

 水道水から検出される発ガン物質で、フミン質と呼ばれる飲料水中の有機化合物と消毒用の塩素が反応して生成します。水の汚染に比例してフミン質がふえるため、トリハロメタンの検出量もふえ、米国ではミシシッピー河口地域のガン発生率が全米平均より高い原因の一つとして、水道水から検出されたクロロホルムなど10種以上のトリハロメタンが疑われたことがあります。米国国立がん研究所が各地について行った調査でも、飲料水中のトリハロメタン含有量と膀胱ガン、腎臓ガンなどの間にある程度の相関がみられたということです。

 しかし他方で、Trp‐P1、Glu-P1などのヘテロサイクリックアミンが、水道水中で塩素から生じる次亜塩素酸イオンとの化学反応で不活性化するという報告もあります。この説に従えば、焼き肉などの変異原性は塩素消毒された飲料水で帳消しになることになり、トリハロメタンだけを有害視してすむ問題ではないようです。

 米国環境保護局はトリハロメタンの制御目標値を飲料水1リットル中100マイクログラム以下と定め、わが国でも厚生省はこの基準を採用していますが、実際に検出される量はこれよりはるかに低いとされます。