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小腸で免疫を刺激し、大腸で発ガン物質を抑える乳酸菌

 

 ヨーグルトに含まれている乳酸菌は、人体にとっては異物に違いありません。小腸に達した乳酸菌は、体内に入るとすぐマクロファージに捕食されるものと考えられます。実際、ウサギの腸内に乳酸桿菌(カゼイ菌)を注入して数時間後に腸管粘膜組織を電子顕微鏡でのぞくと、パイエル板から乳酸桿菌がまるごととり込まれ、マクロファージに食べられているところが観察されています。

 乳酸菌を捕食したマクロファージは、おそらく抗原提示(分解しきれない乳酸菌のかけらを抗原として細胞膜の表皮から突き出して示すこと)を行い、インターロイキン-1を放出して近くにいるヘルパーT細胞などを活性化します。活性化されたヘルパーT細胞がリンパ管や血管を通って全身をめぐることにより、NK細胞などを含む免疫系の全体が活性化されるものと思われます。

 こうして全身の免疫反応が高まった状態が維持されれば、表在性膀胱ガンの手術時にまき散らされたガン細胞が膀胱粘膜に再びつくのを防いだり、また、とり残した微小ガンが増殖、再発するのを抑えることができると考えられるわけです。

 殺菌したヨーグルトには免疫を高める効果がないことから、乳酸菌のこのような免疫刺激は、乳酸菌が生きたまま小腸に到達し、そこで繁殖することによって行われるものと推測されます。

 それでは大腸の免疫組織はどうかといいますと、大腸には小腸のようなパイエル板がないのです。大腸の入口にある長さ6~8mの虫垂はリンパ組織の一種ですし、大腸粘膜の下にもリンパ小節が発達していますが、パイエル板のように粘膜表面近くにリンパ小節が集合した免疫細胞のたまり場は存在しないようです。

 食べ物といっしょに飲み込まれた細菌は胃に入ると、胃酸によってほとんど死滅しますが、酸に強い乳酸桿菌は例外で、空腸に入ると数がふえ始め、回腸でほぼピークに達しています。ビフィズス菌もこれを追うように回腸ではかなりの数になります。乳酸菌は小腸でふえて免疫系を刺激した後、そのつくり出す酸で大腸を酸性の環境に傾け、腐敗菌の勢いを抑え込みます。乳酸菌は小腸で免疫力を高め、大腸で発ガン物質の生成を抑えるというこの二重のメカニズムでガンを防いでくれるのです。