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ガンのリスクを減らすビタミンの切り札「ACE」

 

 疫学的調査の結果から、生野菜や果物は胃ガンのリスクを低くする食べ物とされています。生野菜や果物がのぼる食卓は、食塩の摂取量が少ないためだとも考えられますが、注目されるのはこれらに含まれるビタミンCの作用です。

 胃ガンの原因物質として強く疑われているニトロソアミンは二級アミンと亜硝酸が反応してできますが、ビタミンCは亜硝酸を硝酸に変えて尿中への排泄を促し、この反応を抑え込むのです。同様の作用はビタミンEにも認められ、ニトロソアミンの生成はCやEがあると、およそ10分の1に抑えられるといわれます。

 ビタミンは水溶性(水にとけやすい)のものと脂溶性(油にとけやすい)のものに分かれ、Cは水溶性、Eは脂溶性です。体内でのニトロソアミンの生成は水の多い場所でも油の多い場所でも起こると考えられますので、その生成を抑えるにはCとEをどちらも食卓にのせることがたいせつです。CとEをともに含む食品としては、ほうれんそう、にら、ブロッコリー、さつまいもなどがあげられます。

 CとEにはまた、抗酸化作用(酸化を抑える働き)があります。油脂類やカップラーメンなどの「酸化防止剤」としてCやEが添加されているのをご存じの方も多いでしょう。これらのビタミンはその抗酸化作用により、細胞のガン化か始まる最初のステップであるイニシエーションを防ぐものと期待されています。

 イニシエーションは発ガン物質が正常細胞のガン原遺伝子に傷をつけ、ガン遺伝子として活性化するプロセスでしたが、発ガン物質が遺伝子に働く悪さは強力な酸化反応によるものなのです。そこで、抗酸化作用のあるCやEが細胞内に十分にあれば、発ガン物質が細胞内に入っても遺伝子に悪さを働くのを防ぎ、イニシエーションを抑えると考えられています。

 16年間にわたる約27万人を対象とした大規模な調査の結果、平山雄博士は緑黄色野菜を毎日食べる習慣がガンのリスクを低くすることを突き止めました。緑黄色野菜とはカロチンという色素を多く含む野菜のことです。特に可食部(食べられる部分)100gあたり600沌以上含有している野菜を有色野菜といい、にんじん、かぼちゃにら、ほうれんそう、小松菜、しゅんぎくなどがあります。このほか、緑黄色野菜として、ピーマン、さやいんげん、オクラ、トマトなどがあります。

 一方、カロチンの含有量が少ない野菜はすべて淡色野菜と呼ばれ、レタス、キャベツ、きゅうり、セロリなど、サラダや生野菜としてとる野菜の多くは淡色野菜です。

 カロチンはにんじんやかぼちやの赤黄色のもとになっている色素で、βカロチンなど3種類がありますが、体内で変化してビタミンAとしての作用を発揮するほか、カロチンのままでも吸収されて作用します。

 平山博士は緑黄色野菜がガンを防ぐ理由を推測する際、カロチンの抗酸化作用に注目しています。カロチンにはビタミンCやEと同様、発ガン物質が遺伝子に悪さを働くのを抑える作用があり、CやEとの相乗効果でイニシエーションを防いでいるというのです。

 Cは熱に弱く壊れやすいビタミンなので、Cをとるには煮たり炒めたりして食べることの多い緑黄色野菜よりも、生で食べることの多い淡色野菜のほうがいいように思えます。しかし、緑黄色野菜はカロチンだけでなく一般にCも豊富で、加熱調理による損失分を差し引いても、生野菜にひけをとらないだけのCを含んでいます。カロチンとCをともに含み、その相乗効果を期待できるのが、ほうれんそう、にら、小松菜、ほうれんそう、にら、しゅんぎくなどの緑黄色野菜なのです。

 また、カロチン(ビタミンA)は脂溶性なので、ビタミンEを豊富に含む植物油といっしょにとると、体内への吸収が高まります。レバにら炒めなどはカロチンとビタミンEの相乗効果を期待できるメニューということができます。

 緑黄色野菜のカロチンは体内でビタミンAに変化すると、細胞のガン化を防ぐまた別の効果を発揮します。

 肺などの呼吸器、胃などの消化器、膀胱などの泌尿器では、表面をおおっている粘膜を、たえず分泌される粘液が守っています。粘膜表面の細胞を上皮細胞といいますが、ビタミンAが不足すると、粘液の分泌が著しく低下し、上皮細胞が萎縮して変形することが動物実験で確かめられています。このような状態で発ガン物質が作用すると、ガン化の第二のステップであるプロモーションが起こりやすいのですが、ビタミンAを与えると、粘液の分泌や上皮細胞は再び正常化します。ビタミンAは上皮細胞の膜の構造を正常に保ち、粘液のバリアーで保護することで、プロモーションを抑えると考えられているのです。

 実際、表在性膀胱ガンの再発予防にレチノイン酸(ビタミンA酸)がある程度効いた、との報告があります。また、血液中のカロチン量、1日の喫煙量と肺ガンの関係を調べた研究では、カロチンが多くタバコを吸わない人にくらべ、カロチンが少なく1日1箱以上吸う人は7・3倍も肺ガンが多いことがわかりました。

 注目されるのは、1日1箱以上吸うヘビースモーカーでもカロチンが多ければ、ノンスモーカーでカロチンの少ない人よりも、肺ガンが少ないことです。これは、血液中のカロチンがタバコの発ガン物質によるイニシエーションを防ぐと同時に、変化したビタミンAが肺の粘膜上皮細胞に作用し、プロモーションを抑えた証拠とみることができるでしょう。