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接続詞は日本語と英語で異なる

 日本語の各品詞のうちで、最も影の薄いのは接続詞である。この点、英語などの接続詞とちがう。もし、一日中、何か品詞一つを使わないでしゃべったら100万を出そう、と言われたら、ほかの品詞ではだめだが、接続詞ならば応ずる自信がある。

 日本人は文をつなぐ時に、接続詞の代わりに、多くの接続助詞と言われる助詞や、動詞の活用形を使って間にあわせている。事実、それが出来るのだ。たとえば次のとおり。

  暑い。しかし、風がある。-暑いが、風がある。

  風がある。だから、しのぎよい。-風があるから、しのぎよい。

  風もある。それから、日もかげっている。-風もあり、日もかげっている。

 全部この調子だ。事実、接続詞なしで書いた文章というようなものはいくらもある。

 ここで一つ注意しておくことは、「接続詞」というが、英語などの接続詞に当たる役割は日本語では接続詞ではなく、多くは接続助詞や、動詞の活用形がつとめていることだ。

  I came back because it began to rain.
  If you wish I'll help you. のbecauseやifの役をつとめるものは、
           
  雨が降ってきたから
  もし、望まれるならば

の「から」「ならば」である。

 日本語に接続詞が避けられるのは、これに代わる動詞の変化形や助詞があるからだけではない。日本人は文と文との関係があまりはっきりすることを、うるおいがないとして嫌ったからでもある。前のセンテンスを読み、あとのセンテンスを読む、その間の関係が自然に「だから」だなとか、「しかし」だったなとわかってくる。これを喜んだのである。この傾向は現在の日常語にも、多少反映している。

 たとえば、朝、社員が出勤時刻に遅刻した。課長の前へ行って、あやまる。

  電車が故障しました。だから遅刻しました。

  電車が故障しましたから、遅刻しました。

どうもこれはキツすぎる。自分が遅刻したのは、電車が故障したというちゃんとした理由があるんだぞと、いばっているように取れる。「から」をやめて「ので」を使うと少し救われる。

  電車が故障しましたので、遅れました。

 しかしもっといいのは「ので」も使わないことである。

  電車が故障して、おそくなりました。

 そうして一番いいのは、

  電車が故障しました。

とだけ言って、「すみません」とあやまることだ。

 こんなことから、「から」のような接続助詞は避けられ、同時に「だから」のような接続詞の使用がとめられるのである。

『日本語』 金田一春彦