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ウイルス性肝炎、新生児肝炎、劇症肝炎を徹底解説



 肝障害を引き起こす病態は多岐にわたるので、ここでは小児で経験することの比較的多い、ウイルス性肝炎、新生児肝炎、劇症肝炎について解説する。

 

ウイルス性肝炎


A型肝炎

 A型肝炎ウイルス(HAV)に汚染された水・食物を介した経口感染。潜伏期は約30日。発熱、全身倦怠、食欲不振などの前駆症状後に、黄疸が出現する。一般に軽症で、急性に経過する。前駆期の症状は重篤感が強いが、黄疸出現後に軽快する。牡蛎の生食による感染が有名であるが、近年、海外旅行中の感染が増えてきている。

B型肝炎

潜伏期は1~6ヶ月。乳幼児では無症状のことが多い。顕性化する時にはA型肝炎に似た経過をとる。肝機能は1~2ヶ月で正常化することが多いが、時に慢性化・劇症化する。母児感染(垂直感染)が主であるが、胎内感染はまれで、産道感染によりキャリアー化する。 HBe抗原陽性(ウイルス量が多い)の母からの感染がほとんどである。

C型肝炎

肝機能異常が著しい時には全身倦怠感などが出現するが、ほとんどが無症状である。成人で70%、小児でも半数以上が慢性化する。自然治癒例もあるが、高頻度に肝硬変や肝癌の発生かおる。小児のC型肝炎感染例の7O%以上は輸血歴かおり、ぼかに母児感染や家族内感染などが考えられる。献血血液のスクリーニングは1989年から行われている。

 


新生児肝炎

 新生児・乳児期早期に、原因不明の肝内胆汁鬱滞を呈する疾患。灰白色便、直接型ビリルビンの上昇が特徴で、代謝性あるいはウイルス感染などの原因が推定されているが、胆道閉鎖症との鑑別が重要である。近年減少してきたといわれている。


劇症肝炎

 ウイルスや薬剤投与によって肝細胞が急激に壊死に陥り、肝性昏睡や出血傾向(プロトロンビン時間40%以下)をきたす疾患である。先天性代謝異常症にともなう急激な肝機能障害なども含められることがある。広汎な肝細胞壊死が起こる原因として、患者側の免疫能やウイルスの変異などが考えられているが、きわめて致命率の高い疾患である。出血、脳浮腫、腎不全などの合併症が死因となることが多い。

 

 

診断と治療


ウイルス性肝炎

 A型肝炎は急性発症するため、血中lgM型抗体の存在が診断のポイントとなる。治療は輸液などの対症療法でよいが、家族内感染を防ぐ目的でカンマグロブリン製剤の投与が行われる。

 B型肝炎は、B型肝炎母子感染防止事業によって、 HBe抗原の有無によらず、 HBs抗原陽性の母親から生まれた児に対して予防措置がとられている。生直後にカンマグロブリン製剤(HBIG)投与、その後3回のワクチン投与となる。活動型の慢性肝炎には、インターフェロンやグリチルリチンの投与などが行われる。

 c型肝炎ウイルスはRNAウイルスであるため、感染抗体の存在で感染の有無を診断する(抗体があるからといって治っているわけではない)。母から児への移行抗体のこともある。現在の感染の状況を知るためには、 HCVRNAをRT-PCR法で検索する。治療には主としてインターフェロン(IFN)が用いられ、30べ40%でウイルスの完全排除が期待される。


新生児肝炎

 新生児肝炎では、早急に胆道閉鎖との鑑別を要する。超音波検査、肝胆道シンチ、十二指腸ゾンデによる胆汁色素検査、リポプロテインxなどの検査が行われる。基礎疾患のない症例では、生後3~6か月で黄疸は消失する。


劇症肝炎

 劇症肝炎では、初期にはトランスアミナーゼが著しく上昇するが、肝細胞の壊死にともなって低下してくる。黄疸は増強し、PT・ヘパプラスチンテストなどは低下する。意識障害の出現も診断上重要である。治療は多臓器不全の治療となることが多く、 ICU管理が必要である。肝移植が良好な治療成績をあげており、わが国でも生体部分肝移植が行われるようになった。

 

ナーシングチェックポイント


ウイルス性肝炎

A型肝炎ウイルスは、入院時点での患者の便中に残っていることがあり、便の扱いには充分注意する。

病初期はかなり重篤感が強く、また黄疸出現後の皮膚掻痒感も強い。患者・家族の不安への対応も必要である。

B型・C型肝炎ウイルスに対しては、針刺し事故に注意することはいうまでもない。

小児科では母子感染が主体となるので、各抗原・抗体検査の臨床的意味を充分に把握し、適切なアドバイスを母親に与える。

ウイルスキャリアーの場合、小児でも肝癌を発疱することがあり、エコーなどでの定期的な検査が必要である。


劇症肝炎

劇症肝炎の治療では、生体肝移植の適応の有無が問題となることがある。ドナーの問題など意思決定が困難な治療法であるが、適切な時期を逸して児の状態が悪化してからの移植にならないようにしなければならない。