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『先天性心疾患』を徹底解説

 

 先天性心疾患は、発生学的に心血管系に形態的な異常を認める疾患群で、出生1000人に7~8人の割合で認められる。成因は、染色体異常(ダウン症候群など)によるもの5%、遺伝子異常によるもの3%、環境因子(風疹などの感染、薬物、放射線など)によるもの2%で、残りの90%は原因が特定できない多因子性遺伝によると考えられている。

 チアノーゼのない群とチアノーゼのある群に大別され、チアノーゼのない群は短絡のあるものとないものに分けられる。チアノーゼ群は右左短絡群ともいい、静脈血が体循環に流れ込んでチアノーゼが出現する。非チアノーゼ群では心室中隔欠損が、チアノーゼ群ではファロー四徴かもっとも多い。


1……診断

 先天性心疾患の診断面での進歩は、心エコー検査法の発展によるところが大きい。この検査により、ほとんどの先天性心疾患は、心臓カテーテル・心血管造影検査を行う前に診断可能となった。患児の状態が悪ければ、心エコー検査による診断のみで外科手術を行うこともある。また、最近は胎児診断が積極的に行われ、疾患によっては胎児期からの管理が行われるようになってきた。

 診断の際は、形態的(解音q学的)な診断だけでなく、血行動態的な診断が重要である。たとえば、心室中隔欠損では欠損孔の位置や大きさだけでなく、肺血流が多くて肺高血圧をきたしているのか、心不全の状態にあるのかを判断することで、治療方針が決定される。最近は、コンピュータ断層を利用したヘリカルCT検査とか、核磁気共鳴を利用したMRIなどの画像診断が先天性心疾患の診断にも応用されるようになってきた。しかし、手術適応の決定には、心臓カテーテル・心血管造影検査がもっとも重要な位置を占めている。


2……治療

 治療に際して重要な病態は、心不全、チアノーゼ発作、呼吸不全、不整脈であろう。

 心不全については後述するが、先天性心疾患の場合は、心筋収縮性が低下していることは少ないので、水分制限、利尿剤の投与が中心となる。

 チアノーゼ発作は、チアノーゼの項でも取り上げたが、肺血流減少性チアノーゼ型心疾患にみられる重要な病態で、何かのきっかけで肺血流がさらに減少して起こるとされる。目覚めた時や、啼泣時、排便時、哺乳後、ストレスにさらされた時などに起こりやすく、軽い時はチアノーゼが増強して不機嫌に泣くだけであるが、強くなると意識障害や痙攣をきたし、生命に危険が及ぶこともある。発作時は酸素吸入と鎮静が重要で、麻薬を使用することもある。予防的にはβ受容体遮断剤(インデラル、ミケラン)を内服させるが、現在は早めに手術を施行することが多い。

 呼吸不全に対しては積極的に人工呼吸管理を行うが、特に新生児期には、酸素投与とか過換気が血行動態を悪イ匕させる疾患があることを知っておく。

 不整脈については次項で述べる。いずれにしても内科的治療を要する病態は、手術を考慮する必要があると考えた方がよい。

 小児科領域での治療の進歩にカテーテル治療がある。以前より、完全大血管転位ではバルーンによる心房中隔裂開術が施行されていた。しかし、最近はカテーテル治療が積極的に行われるようになり、疾患によってはこの治療が第一選択になってきた。肺動脈弁狭窄では、バルーンによる弁形成術を行えば手術は不要である。静脈管開存に対するコイル閉鎖術も広く行われている。一方、外科手術との共同作業として位置づけたカテーテル治療も行われている。また、不整脈に対するカテーテル・アプレーション(焼却法)も行われるようになってきた。
 外科的治療法の進歩としては、新生児期先天性心疾患に対する手術成績の向上があげられる。現在は、ほとんどの先天性心疾患に対して何らかの手術が可能であると考えてよい。完全大血管転位に対しては、新生児期に肺動脈と大動脈を入れ換えるジャテン手術が行われる。複雑心奇形で、一方の心室が低形成である疾患の一部に対しては、体静脈を直接肺循環に流入させるフォンタン型手術が行われる。


入院時の病歴聴取のポイント

家系の先天性心疾患の有無、妊娠中(特に妊娠初期)の異常、薬物服用の有無などを聴取する。心不全症状、チアノーゼ発作の有無、呼吸器症状などは特に詳しく聴取する。


観察のポイント

不全症状、チアノーゼ発作、呼吸障害、不整脈などの早期発見に努める。


管理指導のポイント

先天性心疾患のほとんどはカテーテル治療や外科手術の適応があるので、それまでいかに良い状態に保つかが重要なポイントである。心不全児の日常管理で重要なことは、食事に対する配慮(少量頻回哺乳、水分出納チェックなど)、呼吸器感染の予防、貧血の予防などである。チアノーゼ発作を起こす疾患の場合は、親に発作時の対応の仕方(胸膝位、02パックの利用法)を指導しておく。チアノーゼ群では、多血症が進行してきたら脱水にならないよう注意する。感染性心内膜炎に対する予防は重要であるので、むし歯予防の指導も忘れないようにする。

先天改心疾患患児の治療・管理は一生の問題であり、チーム医療が特に要求される分野である。したがって、薬物療法の要点を整理し、カテーテル治療や外科治療の進歩に対する最新の知識を得るように努める。