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『心不全』を徹底解説

 

 心臓は血液を循環さぜるポンプの役目をしている。心臓が送り出す血液量を心拍出量と呼ぶ。この機能が障害され、身体のそれぞれの組織に必要な循環を維持できなくなった状態を「心不全」という。

 心拍出にかかわる因子は、前負荷、後負荷、心筋収縮性、心拍数の4つと考えられる。心臓を弾力のあるゴム風船にたとえて、心不全の4つの因子との関係を考えてみる。

 風船に空気(血液)を多く入れた方が、外に飛び出す空気の量は多く、勢いも強い(前負荷)。しかし、量が多すぎると充分対応できなくなって、風船は弱ってしまう。例としては、短絡量が多く、心拡大のみられる心室中隔欠損があげられる。

 風船の出口を狭くすると、必要量を送り出すためには、中の圧を上げなければならない(後負荷)。この状態が長く続くと風船に無理がかかる。この例としては大動脈縮窄があげられる。

 風船のゴム自体が弱ってしまったら、空気を送り出す勢いは弱くなる(収縮力低下)。拡張型心筋症はこのタイプの心不全で発症する。

 心拍数が関与した心不全は、頻拍発作とか完全房室ブロツクでみられる。前者は心拍数が多すぎるため、後者は心拍数が少なすぎるために心拍出量加減少してしまう。


1……診断

 診断には、基礎疾患の病態の理解と症状の把握がもっとも重要である。心不全症状は、年長児では成人と同様であるが、新生児・乳児期の特徴を知っておく必要がある。浮腫がみられることは少なく、肺うっ血による呼吸器症状が前面にでる。多呼吸、咳漱、喘鳴などがみられ、結果として、多汗、哺乳障害、体重増加不良などがみられる。そのほかに、吐乳、四肢冷感、顔色不良、尿量減少などもみられる。肺うっ血が強くなると呼吸困難がみられ、急速に呼吸不全に陥ることがある。


2……治療

 治療は、心不全の関与している因子を考慮して対処することが重要である。また、先天既心疾患の場合は、外科手術を視野に入れた治療方針を立てることが必要である。

 日常管理では、水分制限、哺乳の工夫、貧血の治療、感染予防などが重要であろう。

 薬物療法は文献1)を参照されたい。基本的には、強心剤、利尿剤、血管拡張剤などを病態に応じて使用する。

 呼吸困難がみられる時は、積極的に人工呼吸管理を行う。ただし、新生児期の先天性心疾患のなかには、酸素吸入や過換気が状態を悪化させるものがあることを知っておく。


入院時の病歴聴取のポイント

哺乳の状況、呼吸状態、体重の増加具合、尿量、チアノーゼ出現の有無などを重点的に問診する。


観察のポイント

○哺乳の状況としては、1回の哺乳量、一気に飲めるか、哺乳時喘鳴があるか、発汗が著明か、吐乳しやすいかなどをチェックする。

○呼吸状態としては、呼吸数、呼吸が粗いか、咳・喘鳴がみられるか、陥没呼吸はないかなどをチェックする。また、呼吸障害が強い時には、発作性に呼吸困難に陥ることがあるので、観察を充分に行う。


管理指導のポイント

基礎疾患の病態を家族にもよく説明し、心不全症状の早期発見・早期治療に努める。

呼吸障害がある時は、湿度を高く保つように配慮し、ミルクの与え方は、少量頻回を心がけるよう指導する。

病態を考えて、新生児期の動脈管依存性先天性心疾患、肺血流増加群などでは、むやみに酸素吸入や過換気を行わないようにする。

薬物は、量を誤ると致命的な副作用を起こすので、常にチェックを怠らないようにする。