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固形腫瘍:神経芽細胞腫、網膜芽細胞腫、奇形腫・胚細胞腫、ウイルムス腫瘍、横紋筋肉腫

 

 

 脳腫瘍を除く固形腫瘍のなかでは、神経芽細胞腫、網膜芽細胞腫、奇形腫・胚細胞腫、ウイルムス腫瘍、横紋筋肉腫の順にい。


神経芽細胞腫

 胎生期の神経稜由来の腫瘍。わが国では生後6か月頃の尿によるマススクリーニングが導入された1985 (昭和60)年以後、欧米と比較して発生頻度が高くなり(約2倍)、一方で治癒率も向上した。これは、本来治療する必要のない自然退縮例にも治療を行っている可能性を示唆する。また、乳児期スクリーニング法が陰性でも、のちに本症を発症する例があり、マススクリ一ニングの至適時期と回数の再検討が行われている。               


網膜芽細胞腫                   

 網膜に原発する悪性腫瘍。2歳以下に好発。両側性が約30%、片側性が約70%。遺伝性は両側性発症で100%、片側性で10~15%、13番染色体上にある癌抑制遺伝子が腫瘍発生に関与する。


奇形腫・胚細胞腫

 原始胚細胞から胚細胞にいたる、種々の分化段階の細胞を発生母体とする腫瘍の総称であり、良性と悪性の両方がある。


ウイルムス腫瘤

 胎生期の後腎に由来する悪性腫瘍である。11番短腕の染色体異常が腫瘍発生と関連している。3歳以下に好発する。


横紋筋肉腫

 横紋筋への分化能をもつ間葉組織由来の悪性腫瘍で、軟部組織腫瘍中もっとも多い。2~6歳と14~18歳に好発する。


1……診断

神経芽細胞腫

1)症状

 腹部腫瘤(副腎、交感神経節原発)が多い。縦隔原発ではホルネル症候群や呼吸困難、脊椎管内への浸潤による両下肢麻痺が現れる。転移巣の症状として、骨痛、関節痛、眼球突出。約60%はマススクリーニングにより無症状で発見される。好発年齢は3歳以下。

2)検査所見

 尿中のホモヴァニリン酸、グァニルマンデル酸の増加。血清LDH、神経細胞特異性エノル酵素、フェリチンの高値。

3)画像診断法

 胸部腹部単純X線写真、超音波法、 CT、血管造影、静脈性腎盂造影法、シンチグラムなど。転移部位は肝、骨、骨髄、リンパ節、肺が多い。


網膜芽細胞腫

1)症状

 白色瞳孔がもっとも多い。斜視、続発性緑内障、角膜混濁もある。

2)検眼所見

 網膜上の白色隆起病変を認め、同一眼中に多発することもある。訴えのない他眼も眼底検査が必要。超音波検査、 CT、 MRIにより浸潤程度を確認する。


奇形腫・胚細胞腫

 身体の正中線上(縦隔、後腹膜、仙尾部、松果体)、性腺(精巣、卵巣)の腫瘤として発生する。確定診断は組織診断。単純X線写真、 CT、 MRIなどが画像診断として有用。腫瘍マーカーとしてアルファフェトプロテインヒト絨毛性ゴナドトロピンがある。


ウイルムス腫瘤

 腹部腫瘤、血尿などの症状で気づかれる。高血圧を合併する例もある。無虹彩症、半身肥大の先天奇形をともなうことがある。検査所見ではLDHが高値になるが、腫瘍マーカーは特にない。腎盂造影、 CT、 MRIが画像診断として有用。転移部位は肺が多い。


回横紋筋肉腫

 四肢、泌尿生殖器、眼窩などに原発する腫瘤病変。特異的腫瘍マーカーはない。確定診断は組織診断。画像診断として、 CT、 MRI、シンチグラムが有用である。

 

2……治療

神経芽細胞腫

 病期I、 IIでは外科的摘出後、シクロホスフォミド、ビンクリスチンなどの化学療法。病期in、 ivでは、術前に化学療法(シクロホスファミド、エトポシド、シスプラチン、ピラルピシンなど)と放射線療法を施行して腫瘍を縮小させたのち、外科的摘出をし、ふたたび化学療法。病期m、 ivdvs以外)で自家骨髄移植の適応あり。


網膜芽細胞腫

1)治療目標

 第1に根治と長期生存、第2によりよい視力の維持、第3に失明しても容貌の中心としての眼球の保存。

2)眼球摘出の適応

 ①視神経浸潤や強膜外浸潤が疑われる場合。
 ②緑内障や内眼炎を起こしている場合。
 ③保護者が保存的治療を拒否する場合。

3)摘出眼の原則(摘出後には偽眼を装着する)

 ①片側性の場合は患眼。
 ②両側性の場合は腫瘍がより進行した眼球。

4)視力保存療法

 視力保存療法は、通常両側性の非進行の眼が適応となるが、片側性でも早期に発見された場合は適応あり。光凝固法、冷凍凝固法、放射線療法、化学療法を組み合わせることが多い。


奇形腫・胚細胞腫

 外科的に摘出し、悪性の場合は、エトポシド、シクロホスファミド、アクチノマイシンD、アドリアマイシン、シスプラチンなどの抗癌剤を投与する。

ウイルムス腫瘤

 National Wilms' Tumor Studyに従って治療する。原則としてまず外科的摘出。病期と組織分類(予後良好型と不良型に2大別)に応じて術後化学療法をする。病期Ill、 IVでは放射線療法も追加する。抗癌剤としては、ビックリスチン、アクチノマイシンD、アドリアマイシン、シクロホスファミド、シスプラチンなどが使用される。

回横紋筋肉腫

 Intergroup Rhabdomyosarcoma Study の治療方法に基づき、組織型・病期に依存して治療する。まず外科的摘出。化学療法をして、腫瘍を縮小させたのちに手術することもある。化学療法は全病期に適応(限局型ではアクチノマイシンD、ビンクリスチン、アドリアマイシン、進行型ではこれらにシクロホスファミド、シスプラチン、エトポシドを追加する)。放射線治療は病期II以上に適応。

3……予後

神経芽細胞腫

 1歳以下、初期癌、 IVs、成熟型組織型、染色体正常、癌遺伝子N mycの増幅なしなどが予後良好因子。

網膜芽細胞腫

 5年生存率は80%以上。保存療法後の視力の良好な保持は、初発時に腫瘍が大きい場合、複数存在する場合、黄斑部を含む場合では困難である。

奇形腫・胚細胞腫

 抗癌斉lに対する感受性が強く、5年生存率は約80%である。aウイルムス腫瘤

 悪性固形腫瘍のなかで、もっとも予後のよい腫瘍のひとつである。限局型、予後良好組織型では90%以上で3年以上の生存率がある。

回横紋筋肉腫

 5年生存率は、病期I、 II、 III、 IVで各々約90%、 80%、 70%、 30%。組織型では、 botryoid型と胎児型が良く、胞巣型は不良である。発生部位では眼窩・膀胱を除く泌尿生殖器が良好で、傍髄膜領域では不良である。

入院時の病歴聴取のポイント

O遺伝的背景が強い腫瘍(特に網膜芽細胞腫)もあり、家族歴を詳細に聴取し、患児の兄弟についても検査をするよう家族に指導する。

O家族の不安を知る。多くが悪性腫瘍であり、生命予後のかんばしくない腫瘍も多い。また、乳幼児期に発生しやすく、家族の長期の付き添いを余儀なくさせられる。さらに、固形腫瘍は手術が診断と治療の第一義的になるので、手術そのものに対する不安がある。これらを充分理解し、看護婦、医師、ケースワーカーなどが協力して、チームとして治療看護にかかわる
姿勢を示す。

入院治療中の観察のポイント

O手術前後のバイタルサインや水分出納には充分に注意をはらう。化学療法・放射線療法での注意は、治療の原理、支持療法を参照。

網膜芽細胞腫で視力を失った場合の観察のポイント
4歳以前に失明すると、見えていた時の記憶の多くを忘れてしまう。残っているほかの感覚(聴覚、味覚、嗅覚、触覚)を活用してイメージ化を繰り返す。転落・衝突にも充分注意する。