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急性腎炎:小児の代表的な原発性糸球体疾患

 

 急性腎炎とは正式には急性糸球体腎炎のことであり、小児の場合は大半は溶連菌感染後に認められる。減少傾向にあるとはいえ、小児の代表的な原発性糸球体疾患の一つである。通常、A群β溶連菌による扁桃炎などの1~3週後に、急性腎炎症候群(血尿、蛋白尿、乏尿、浮腫、高血圧など)として発症する。本症の予後は一般に良好で、慢性腎炎への移行はあってもまれである。

 本症は、血中ないし腎局所での免疫複合体の形成により惹起される腎炎と考えられている。急性期には、光顕ではびまん性の管内増殖性腎炎、蛍光抗体法ではlgGやC3の沈着、電顕では糸球体基底膜上皮下に電子密度の高い沈着物、パンプス(humps)を認める。


1……診断

 溶連菌感染後急性糸球体腎炎の診断基準は、長沢らのものが簡明で妥当と思われる。これら5項目すべてを満足するものは、まず本症と考えられる。典型例以外に、さまざまな非典型例が存在し、注意を要する。無症状の例、軽微な尿異常のみの例、低補体血症の遷延する例、ネフローゼ症候群を呈する例、急性腎不全の併発例などである。

 鑑別診断としては、急性腎炎症候群を呈するすべての疾患が鑑別の対象となり、おもなものは膜性増殖性腎炎、ループス腎炎、lgA腎症、紫斑癇性腎炎、アルポート症候群などである。病歴・症状や検査所見(血清補体価、抗核抗体、 IgA、 ASOなど)から、鑑別がほぼ可能である。膜性増殖性腎炎やlgA腎症などとの鑑別には、腎生検を要する。


2……治療

 本症は自然治癒傾向が強いので、それを妨げないようにするとともに、合併症の予防や管理が重要である。本症に特異的な治療法はなく、安静、保温、食事療法、感染防止、血圧の管理などが中心となる。軽症例では自宅療養も可能であるが、高血圧、浮腫や乏尿などをともなっていれば、急性期には入院させ、経過を充分に観察することが望ましい。

 肉眼的血尿、浮腫、乏尿、腎機能低下、高血圧などのある場合は、ベッド上安静とともに、水分、塩分や蛋白質の制限が必要である。これらの症状がとれれば、食事や生活制限を次第に解除していく。薬物療法としては、溶連菌に感受性のある抗生物質を10~14日間投与する。高血圧や高カリウム血症があれば、食事療法とともに降圧剤やカリメートなどを要することがある。

○医師による急性腎炎の確実な診断加重茹である。低補体血症が遷延すれば、膜性増殖性腎炎との鑑別のため腎生検を要することがある。

○急性期の治療と管理が特に重要である。高血圧、浮腫や乏尿があれば入院治療が望ましい。この時期は、安静、食事療法が重要で、多くの症例はこれのみで症状の警戒を認める。

心不全、高カリウム血症をともなう急性腎不全、高血圧脳症が急性期の三大危険症と考えられている。保存的療法にもかかわらず、高度の腎不全、心不全や高カリウム血症をともなう場合、早期の透析が必要なことがある。

○高血圧性脳症は、きわめてまれではあるが重大な合併症で、頭痛、嘔吐、意識障害や痙攣などが認められる。安静と水分・塩分制限でも血圧が正常化しない場合、降圧剤や利尿剤を必要とすることがある。頭痛などがある場合、頻回の血圧測定か望ましい。

O急性期さえ乗りきれば、本症の予後はまず良好であることを理解する必要がある。次第に食事や安静度をゆるめていく。低補体血症や尿異常が遷延することもあるが、長期予後は一般に良好である。慢性腎炎への移行は少ないと考えられるが、なお不明な点もある。