医薬翻訳サービス

薬理学、生化学、統計学に精通した翻訳士が対応いたします

水痘・帯状疱疹ウイルス感染症

 水痘・帯状疱疹ウイルス(VZV)が水痘および帯状疱疹の原因ウイルスである。水痘はVZVの初感染で起こり、全身の水疱を形成する伝染性の疾患である。潜伏期11~21日で、ウイルスは水痘患者の気道粘膜や水疱からの接触感染か、時に空気感染する。発熱とともに発赤疹が出現し、3~4日の経過で丘疹、水疱、痂皮形成と移行する。通常躯幹から始まり、顔面・四肢にひろがり、頭部や口腔粘膜にも発疹を認める。さまざまなステージの発疹が混在するのが水痘の特徴である。ヒトに感染させる期間は、発疹出現1~2日前からすべての発疹が痼皮化するまでである。水痘は1週間ほどで治癒するが、ウイルスはその後体内の神経節に潜伏する。

 一般に、12歳を越えた小児と成人の水痘は重症化しやすい。また、免疫機能が低下している患者(白血病悪性リンパ腫抗癌剤免疫抑制剤や高用量の副腎皮質ステロイド剤の投与中、 HIV感染など)がVZVの初感染を受けると、水痘は治癒傾向がみられずに長期化し、肺炎、肝炎、脳炎などを起こして重篤な状態になる。

 注意すべき合併症・続発症には、下記の①~⑦がある。

 ①細菌合併症:黄色ブドウ球菌やA群溶連菌による皮膚感染症はよく経験する。肺炎や敗血症などの重症感染症も起こり得る。

 ②ライ症候群:詳細な原因は不明であるが、アスピリンなどのサリチル酸

   (鎮痛解熱剤)の投与を受けた水痘や、インフルエンザの小児患者に起こりやすい。肝臓や腎臓などの脂肪変性をともなう脳症である。嘔吐、意識障害、肝機能障害・肝不全、黄疸、プロトロンビン時間の延長、低血糖などが現れる。死亡率が高い。現時点では、小児に比較的安全な鎮痛解熱剤は、アセトアミノフェンと考えられている。水痘やインフルエンザの時に解熱剤を使用したければアセトアミノフェンにするべきである。

 ③VZVによる脳炎・肺炎:いずれも致命的な合併症である。

 ④血小板減少症やDIC(播種性血管内凝固)が起こる。皮膚に出血斑が出れば、緊急事態である。

 ⑤肝炎、関節炎、糸球体腎炎、視神経炎、角膜炎なども起こる。

 ⑥妊娠前半に妊婦がVZVの初感染を受けると、 1.2~2%の確率で先天性水痘症候群(四肢低形成・小頭症・水頭症・視神経萎縮・白内障など)が起こる。

 ⑦死亡率が30%もある新生児重症水痘は、分娩5日前から分娩2日後までの間に母親が水痘を発疱しか時に起こっている。

 帯状疱疹は水痘治癒後に体内に潜伏したウイルスが加齢や免疫の低下などにより活性化されて増殖し再燃した病態で、成人に多い。神経分布領域に一致して痛み・痒みがあり、その後浮腫状の紅斑を生じる。紅斑上に集属した水疱を生じ、痂皮化するのに2~3週間かかる。疼痛はかなり激しいこともあり、発熱など全身症状をともなうこともある。幸いなことに、小児では激しい痛みを訴える例はほとんどない。


1……診断

 いずれも典型例では診断は容易であるが、確定診断としては、①水疱内容からのウイルス分離、②水疱内容からのウイルス抗原の検出、③血清学的にペア血清での抗体価上昇の確認を行う。


2……治療

 健康小児の場合は対症療法を行う。水痘の水疱にはフェノール亜鉛華リニメント塗布を、掻痒が強い場合は抗ヒスタミン剤の短期内服を行う。水痘発症24時間以内にアシクロビル(ACV)の内服(40mg/kg/日)を5日間行うと水痘の軽症化か期待できる。しかし、アメリカの小児科学会では、健康小児に安易にACVを内服投与することは推奨できないとしている。重症化する危険性がある場合と、水痘未感染の白血病患者や免疫不全症患者などと接触する小児の場合に、 ACVの内服を行うのがよいようである。また、白血病悪性腫瘍、免疫不全症などの細胞性免疫低下をともなう場合、水痘は重症化してときに致命的なので、接触がわかれば水痘高力価免疫グロブリン製剤を早期投与する。発疱時には水痘高力価免疫グロブリン製剤とともにACV(5 mg/kg/回、上限は10 mg/kg/回、1時間以上かけて)を8時間ごとに5~7日間点滴投与する。

 帯状疱疹は、通常非ステロイド系消炎鎮痛剤の内服、 ACV軟膏外用を行う。眼領域におよぶときは角膜炎に注意が必要である。重症時には水痘重症時と同様ACVの投与が必要となる。

O水痘患者の感染経路は、接触感染と空気感染である。帯状疱疹患者の感染経路は接触感染であり、空気感染はほとんどない。このことを踏まえて院内感染対策を考える。

○医療従事者自身が感染源にならないように、手洗いの励行とみずからの健康管理(水痘の既往歴の確認、免疫がなければ水痘ワクチン接種)を行うことは重要である。

○水痘の発疹(水疱)を不潔な手で掻破し、細菌の合併感染を起こさないように指導する。

O水痘や帯状疱疹が重症化する危険性のある患者には、全身状態、バイクルサイン、皮膚の発疹の性状(出血斑、膿疱疹・蜂巣炎・膿瘍などの化膿病変)などを観察する。

O病棟内で水痘が発生した場合、医師と協力して対策をたてる。具体策は、

 ①水痘に接触した者の確認と水痘に免疫のない者のリストアップ、②退院が可能な患者はできるだけ退院させる、③退院できない患者には、感染源としての隔離対策(水痘の潜伏期間は最長21日間、高力価免疫グロブリン製剤を投与した患者では28日間)、④水痘高力価免疫グロブリン製剤や水痘ワクチンの投与を医師の判断のもとに行うこと、などである。

O学校保健法における水痘患者の取り扱いは、全ての発疹が痂皮化するまで出席停止である。