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鍼治療で浸潤癌を直す

 

 「大阪にハリでガンを治療している先生がいますよ。あまり派手な所へは出たがらないようですが、かなりの効果があがっているようですよ」

 遠赤外線治療器のビームエ業株式会社社長の杉原俊雄氏から、このような情報を得て、さっそく大阪へ向かいました。

 地下鉄の心斎橋から歩いて約十分、繁華街の騒々しさからは、少し解放された地域にある大きなマンションの一室に、ハリ治療をおこなう演口智子先生(六十四歳・針灸師)の治療所がありました。

 演口先生は、子供のころ腰にできたおできを祖母にお灸で治してもらったことがきっかけで、東洋医学に興味を持ちはじめ、独学で勉強をつづけてきたそうです。

 四十九歳のときに針灸の学校へ入って正式に治療師の資格を取りましたが、学校の勉強よりも独学で体験してきたことのほうが現在の治療に役立っていると語ります。

 「肩こりとか腰痛にならいいですよ。でも、ガンとかリューマチといった難病ぱ教科書通りの治療でぱとても治りませんよ。

 ハリ治療の場合、ツボが非常に大きな意味を持つのですが、教科書のツボに頼っていてはダメですね。どう説明していいのかわかりませんが、ツボの位置は毎日変わります。これは体験的に覚えたとしかいいようがないですね」

 このような演口先生の方法を霊感的だという人もいるようですが、これに対して先生は強く反発。

 「長い経験にもとづいた勉強を霊感という言葉で簡単に片づけられてしまったらたまりませんよ」というのです。

 西洋医学のように合理的な理論で説明はつかないが、ハリの威力は自分が一番知っている、という自信の現れともとれる言葉です。

 先生は、ここ十一年で四十人ほどの未期ガン患者を治療し、そのうち五〇%は正常な生活ができるまでに回復させているそうですが、その治療のポイントを次のように述べています。

 「ガンの患者さんは例外なくからだの奥のほうの筋肉が硬くなって、からだが変形してしまっています。まず、その硬さをゆるめてやるハリを打ちます。次に、弱った肝臓や腎臓の働きをよくするためのハリですね。そして、最後に患部に働きかけるハリです。

 約二~三カ月かかりますが、一回ごとの治療でどんどんよくなっていくのがわかるはずです」

 その治療を受けてみました。もっとも、記者の場合、からだはすこぶる健康ですが、体験したほうが説得力があるだろうと、涜口先生に、ガン治療のためのハリを打ってほしいと申し出たのです。

 長さ二〇mほどのハリをみせられたときはちょっとおじけづきましたが、先生の「大丈夫」という言葉を信じて、バンツー枚という姿でベッドの上に横になりました。

 治療に使うハリは特注品。「根もとまで刺すので、ふつうの「リだと曲がってしまう」とかで、少し太めのものを使います。

 まず、背中のニカ所の治療点に素早くハリを打ちます。背骨に沿って下から上へと突き上げる感じです。次がお尻。ちょうど尾てい骨あたりから、これまた背骨に沿って上ヘブスリとハリが打たれます。

 歯を食いしばっていても「ウッ」と声が漏れるほど痛いものでした。汗もあふれ出てきます。そして、仕上げが右脇腹からヘソに向かって刺し込むのです。

 二〇cmもあるハリを根もとまで刺し込むのですから、未熟な者なら簡単に内臓を傷つけてしまうでしょう。それをたやすくおこなう演口先生の技術は相当なもの、と判断しなければならないでしょう。

 ちなみに、この治療は特別なもので、末期のガン患者でも二~三カ月の間に数回だけで、あとはもう少しソフトな治療がおこなわれるそうです。

 演口先生のハリ治療でガンが完治したという男性と、吉祥寺の喫茶店で会うことができました。

 仮に、Aさんとしておきます。年齢は四十五歳。

 Aさんは、武蔵野赤十字炳院で手術を受けました。腸のポリープを取り除くと医者からはいわれていたのですが、実はガンの末期で、S状結腸にできたガンが腸を破り後腹壁へ浸潤、尿管を圧迫しはじめているという非常に悲観的な状況でした。

 手術では、S字結腸を切除しましたが、後腹壁、尿管には手がつけられなかったというのです。

 「一ヵ月ほどで退院したんですが、回復の具合がとても悪かったんですね。それで、兄が大阪にいいハリのお医者さんがいると教えてくれました。兄は私がガンだと知らされていましたので、なにかいい療法がないか一生懸命探してくれたんだと思います」

 Aさんは、お兄さんに抱えられるようにして演口先生の治療所を訪ねたのです。退院して一週間後の
ことでした。治療は一日に二~三時間、まず毎日十日間つづけられました。Aさんは、この治療の過程で濱口先生から、ガンだということを知らされています。

 「一回の治療でだるさがなくなりました。二回、三回と受けるうち、しだいに内部から力がわいてくるような感じがしてきました。

 来たときはとても一人で歩けなかったのに十日の治療で、大阪城まで約四十分位、歩いて行けるようになりました。ガンだと知らされたときは、もうこの先生を信じるしかないと腹をくくりました」

 治療は、その後も週に五、六回のペースで三ヵ月間つづけられたのです。

 「東京へ帰ってから病院で検査をしてもらいました。CT、エコー、血液検査です。結果はまったく異常なし。感激でしたね」

 Aさんの顔は、ガンを克服した人間の喜びに満ちあふれていました。

『癌を直す大辞典』より