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総括原価方式の問題点


 規制当局が完璧と信じて疑わなかった総括原価方式に対して衝撃的な批判が投げかけられた.総括原価方式は,

   料金=C(1十r)

で料金水準が決定される.しかし,レートベース方式のもとでは事業報酬の対象はすべての資産ではなく,サービスの質向上に寄与する資産(記号Mとする)のみであり,それ以外の資産(Nとする)には認められない,そこで前記式は

   料金=M (1十r)十N

と書き改められる.この事業者が現在の報酬率のもとで,支出Mを増加させればより多くの収益を得ることができる.すなわち,規制の下では設備投資が過剰になる可能性を持っているのである.このことを最初に指摘したのはアバーチとジョンソン(Averch, H. & L. L. Johnson)の2人で,規制が過剰な設備投資を促すことをアバーチ・ジョンソン効果(AJ効果)という.過去の実証的研究では,対象とした産業,時期によってAJ効果は認められる,認められない,の相反する結論が出されている.

 この方式による規制には別な問題もある.事業者は自らのコスト構造を完全に把握している(把握しうる)のに対して,規制当局はこれを完全に把握することはできないという情報の非対称性である.偽装食肉事件のように事業者が虚偽の報告を行う場合がある.また虚偽の申請をしていなくても,昨今では技術が飛躍的に向上しているので,料金改定直後にコストダウンに成功し,結果的に虚偽の申請になってしまう事態も考えられる.いずれのケ-スであれ,利用者は不当に高い料金を払わされることになる.さらに,規制当局は事業者の事業運営全般について細大漏らさず把握しているわけではない.そのため,事業者が効率化の努力を怠り高コストとなっている場合でも,料金改定が黙認されてしまう可能性がある.

 また,いったん設定された適正報酬率(かりに5%とする)は既得権化し,事業者はコストダウンによってではなく料金改定によって低下した収益の回復を図る傾向が強まる(モラルハザード).総括原価方式(公正報酬率規制)には,情報の非対称性に起因した虚偽の報告と,経営効率化努力の欠如,さらには報酬率の既得権化により,不当に高い料金が設定される可能性がきわめて大きい.この欠陥を正そうとするのが規制改革派の主張である.