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医療費審査の根拠

 保険医療機関は、患者1人につき傷病の治療に要しか1ヵ月間の費用を「点数表」および「薬価基準」に基づいて算定し、社会保険診療報酬明細書(レセプト)に記載して、審査支払機関へ請求する。医療機関からの請求を受けた審査支払機関は請求内容をチェック(審査)しか後、患者一部負担金を控除した金額の支払いを各保険者に請求する。審査支払機関からの請求を受けた保険者は請求内容を再度チェック(レセプト点検)し、正当な請求であることを確認した後に保険給付する旨の決定を行い、診療報酬を審査支払機関へ納付する。保険者から診療報酬を収納した審査支払機関は、これを医療機関に支払うことで医療費の精算は終了する。

 なお、保険者、保険医療機関および保険薬局に審査支払機関の審査結果に対して不服ある場合には異議申し立て(再審査請求)が認められている。

 審査支払機関には国保連と支払基金の二機関があり、担当する制度・保険者が異なる。国保連は、戦前から国保制度の啓蒙と普及を目的として都道府県単位に設立され、任意団体として活動してきた。48年には医療費の審査支払部門を設置する改組が行われ、58年の新国保法では「国保保険者が目的達成のために共同で設立する法人」(国保法第83~86条)と規定され、国保法を根拠とする公法人に改められるとともに、医療費審査のために診療報酬審査委員会を設置すべきことが規定された(法第87条~90条)。なお、国保連の中央団体として社団法人・国民健康保険中央会がある。

 支払基金は、社会保険診療報酬支払基金法に基づいて48年に設立された特殊法人である。設立の目的は「診療報酬の迅速な支払い」(社会保険診療報酬支払基金法第1条)であり、併せて保険医療費の審査を遂行すべきことが規定されている(法第13条第1項)。支払基金は本部を東京に置き、各都道府県に支部を配置している。本部は管理部門であり、医療費の審査支払いは都道府県支部が行っている。

 審査支払機関が医療費審査を行い得る法的根拠は、業務委託契約により保険者の医療費審査権が委譲されたことにあると考えられる。すなわち国保法第45条第4項と健保法第76条第4項(旧法第43条ノ9第4項)は「療養の給付は保険者が審査して給付する」として医療費審査権を保険者に帰属させているが、続く国保法第45条第5項では「国保保険者は審査を国保連または支払基金に委託することができる」とし、同様に健保法第76条第5項(旧法第43条ノ9第5項)は「保険者は審査を支払基金に委託することができる」としている。各保険者は国保連または支払基金と審査支払に関する業務委託契約を締結し、契約により保険者は審査権を審査支払機関に委譲したと考えられる。

(3)請求・審査・精算の流れ

 国保連、支払基金支部ともに管轄都道府県内に所在する医療機関からの請求を審査することとなっており、管轄区域外の医療機関からの請求は取り扱わない。また、42万点(420万円)を超える高額な請求は国保中央会(中央審査)、支払基金本部(特別審査)が審査を行っている。一方、保険者への請求は、保険者の所在都道府県を管轄する国保連、または支払基金支部が行う。しかし、医療機関の所在都道府県と保険者の所在都道府県が異なること(他県分診療)は珍しくない。他県分診療の精算には若干面倒な事務処理を要するがここでは割愛する。

 審査支払機関に提出されたレセプトは、図7-2のような過程を経て精算が行われる。医療費審査には審査支払機関が行う原審査と保険者・保険医療機関・保険薬局からの異議申立てに基づく再審査とがある。再審査についての法的規定はないが、行政不服審査法に準拠して審査支払機関が異議申し立てを受け付けている。

 原審査は、審査支払機関事務局が行う一次審査(事務共助)と、それに続く二次審査(委員会審査)の二段階方式で行われている。原審査を一次審査、再審査を二次審査と呼ぶこともあり、混同を避けるため事務共助、委員会審査と称する。

 事務共助においては所定点数の誤りや計算ミス、薬剤の適応外使用などを文字通り事務的にチェックし、不適切と判断される請求については「疑義付せん」を貼付して審査委員会へ回付する。事務共助においては、老人レセプトや入院レセプトついて入念なチェックが行われている(重点審査)。

 審査委員会においては、事務共助レベルのチェックに加えて医学的判断を伴った審査が行われ、レセプト1件ごとに点数が決定される。審査委員会とその審査録は非公開であるため、外部から委員会審査の全容を知ることはできないが、審査の公正を期するため、審査委員会は保険者推薦・医療機関推薦・公益の三者構成とし、また複数の審査委員が同一レセプトの審査に当たっている。

 委員会審査を終えたレセプトは、支払請求書とともに保険者に送付される。保険者はレセプトを再度チェックし(レセプト点検、確認事務ともいう)、正当な請求と認めたものについては保険給付する旨の決定を行い、異議あるものについては再審査請求を行う。なお支払基金の調べでは再審査請求の98%程度が保険者からの請求となっている。

 保険者は以下の4点からレセプトをチェックしている。第1は「資格審査」である。資格審査とは、請求のあった診療年月において、当該患者が被保険者あるいは被扶養者の資格を有しているかどうかの確認である(老人保健対象者については住民登録の有無をチェック)。

 第2のポイントは「縦覧点検」である。これは、同一患者の数ヶ月分のレセプトを時系列的に観察することであるが、これによりの症状の変化が若干なりとも読み取れることから、不必要な治療などを指摘することができる。

 資格確認は被保険者台帳を持つ保険者のみが可能で、縦覧点検もレセプトの最終保管者である保険者だけが可能なチェックである。したがって、以下の2点が審査支払機関の主たるチェックになる。

 第3は「事務上の審査」である。これは診療行為別の公定点数と医薬品銘柄別の公定価格についてのチェックと縦計・横計の検算であるが、審査支払機関における事務共助の再チェックである。

 第4は「診療内容に関する審査」である。医学的見地あるいは料金表の解釈についてのチェックであるが、医学的見地からのチェックは顧問医を置いた少数の保険者からのもので、多くは点数表と薬価基準の解釈に関するチェックであると推測される。

 電気、ガス、水道などの料金表はまことに分かりやすいものであるから、読者諸氏には料金表の解釈に関する異議申立てが存在することを理解しがたいのではないかと思う。具体例は割愛するが、点数表と薬価基準にはかなり曖昧な表現があり、解釈をめぐる異議申し立てが多い。