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ドラッグ・デリバリー・システム、略してDDSについて

 薬はふつう口から飲んだり、静脈に注射して使う。だがこれらの方法は、薬によっては極めて効率が悪いことがある。たとえば制ガン剤を注射すると、そのほとんどが正常な組織にいってしまい、肝心のガン組織には少量しか運ばれない。このためガンを完全に殺そうとすると、人間自体が死んでしまう結果になる。また、口から飲んだ薬は体内で分解され、徐々に排泄されていくから、初めは効いても時間が経つと効果がなくなってくる。

 こうしたいままでの薬の欠点をなくすために、体内への薬の配送方法を変えたのがドラッグ・デリバリー・システム、略してDDSだ。これには次の三つの方法がある。

①ターゲット療法

 体の正常部分には影響を与えず、治療を要する部分に必要な量の薬を、必要な時間だけ送り込もうというもの。

 この製剤の代表はアステラス製薬の制ガン剤スマンクスである。油性のX線造影剤リピオドールを動脈に注射すると、ガン組織に長く停滞し、正常組織からはすぐ除去される。この性質を利用し、リピオドールに制ガン剤を溶かして、ゆっくりと長期間にわたって放出するようにしたものだ。もう一つ、細かい脂肪粒子中にプロスタグランディンを溶かし、動脈閉塞症による潰瘍や痛みを治そうという薬もある。この脂肪粒子が、硬化した動脈に集まりやすい性質を利用したもので、三菱ウェルファーマのリプル、大正製薬のパルクスがそれである。

②放出制御

 薬の成分を特殊な膜で覆い、溶け出す時間を調節したもの。体内で分解されやすい狭心症、高血圧症などの治療薬や、消炎鎮痛剤に実用化され、血圧の安定化、リウマチの痛み止めなどに威力を発揮している。

 このタイプは飲み薬だけでなく、皮膚から吸収させる狭心症薬として貼り薬や軟膏が開発されており、代表的なものに、日本チバガイギー(現ノバルティスファーマ)のニトロタームTTS、三和化学のバソレーター軟膏などがある。

③吸収促進

 本来腸から吸収されない薬の化学構造を変え、吸収されやすくしたうえで、体内で元の形に戻して効果を発揮させるよう設計するもので、プロドラッグと呼ばれる。抗生物質に多く応用されている。

 新薬の開発が未知の物質の発見なら、DDSは既知物質の新使用法の開発である。資源の有効利用という点からも注目され、各メーカーはこぞってDDSの研究に力を入れ始めている。

【製剤見本】医薬品使用前に、医師や薬剤師が剤形、色、におい、味などを確認するためにメーカーが提供するもの。錠剤6個以下、注射剤2アンプル以下、軟膏5g以下などとなっている。