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抗エイズ薬は実現するのか?

 エイズ患者は減少のきざしをみせていない。その治療費は個人の負担に耐えるものではなく、先進諸国はエイズ対策に膨大な金額を投入している。

 当然ながら、世界の製薬企業は、より効果的なエイズ予防薬や治療薬の開発にしのぎを削っている。もっとも効果のある予防法はワクチンだが、エイズウイルスは遺伝子が変異しやすく、効果的なワクチンがっくりにくい。さらに血液中で抗体とウイルスが共存する特殊な性質をもっているため、ワクチンで抗体をつくってもエイズ感染の予防はむずかしい。こうした未解決の問題はあるが、エイズ予防ワクチンの開発研究は世界の製薬企業で続けられている。

 一方、エイズ治療薬については、このところかなり効果のある薬剤が開発されている。

 要は人間の細胞内に入り込んだウイルスが増殖し、外へ出ていくまでのプロセスのどこかをブロックすればよいのである。ウイルス侵入の第一段階、細胞へのウイルス吸着をストップさせる薬は、現段階では有効なものがみつかっていない。また、細胞侵入後に、ウイルスの殼から遺伝子をもつ核酸が外へ出るのを抑える薬は、研究が続けられているが実用化にはほど遠い。

 しかしながら、殼の外へ出た遺伝子の複製を妨害する逆転写酵素阻害薬は、有望なものが開発されている。グラクソースミスクラインのレトロビル、エピビル、ザイアジェン、ブリストルーマイヤーズスクイブのヴァイデックス、ゼリット、中外製薬(旧日本ロシュ)の(イビッド、万有製薬のストックリンなどである。

 もう一つ、ウイルス自身のもつタンパク分解酵素で、ウイルスの増殖に必要なプロテアーゼの働きを妨害する薬は、万有製薬のクリキシバン、中外製薬(旧日本ロシュ)のビラセプト、インビラーゼ、アボットジャパンと大日本住友製薬のノービアなどが開発された。逆転写酵素阻害薬とプロテアーゼm害薬との併用で、症状の進展はかなり抑えられるようになった。

 開発の進むエイズ治療薬だが、製薬会社にとって頭の痛い問題が浮上してきた。国民所得の低い発展途上国の人々にとって、抗エイズ薬は高嶺の花。そこで、エイズに苦しむ南アフリカ共和国政府が、特許制度を無視して抗エイズ薬を製造する動きに出たのだ。加えてブラジル政府が抗エイズ薬二剤の特許権取消を警告するなど、ことは特許権に波及してきた。

 こうした製薬業界への強い風当たりに、グラクソースミスクラインメルクブリストルーマイヤーズスクイブの各社は、サハラ地帯のアフリカ諸国を対象に抗エイズ薬の値下げに踏み切った。引き下げなければ、企業の知的財産権が侵害されるとの危機感からである。

 しかし、より有効な薬が開発された時には、再び同様な混乱の起きることが予想される。

【GLP】医薬品の安全性試験の実施に関する基準。安全性試験データの信頼性を確保するため、動物実験などの作業の標準化、記録、監査体制、機械、施設などを規定したもの。