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ホスピス・ケアとは何か

 静岡県浜松市の聖隷三方原病院には、ホスピス病棟が設けられていて、その案内文には次のように記されている。

 「ホスピスとは肉体的な苦痛を取り除くための治療をするだけでなく、精神的な苦痛・孤独・不安などを軽減し、患者や家族とともに、生命の意義を考えつつ、最後まで人間らしく尊厳をもって有意義に生き抜くことができるように援助していくところです」

 ホスピスの意味はこの文章に言い尽くされている。末期ガンなどで死が確実視されている患者は、肉体的な苦痛のほかに恐怖、不安、抑うっなどの精神的苦痛を抱えている。さらに入院費、家族の今後の生計などの不安も感じているのが一般的である。

 ところが、これまでのガン治療は早期発見、早期治療に目が向けられ、終末期の医療はどちらかといえばなおざりにされてきた。延命治療だけが行なわれる傾向があったのである。そこで患者の全人的治療を行なうホスピス・ケアの必要が叫ばれるようになった。

 そのような状況のなかで、聖隷三方原病院は、日本のホスピス・ケア第一号として、「肉体的苦痛」「精神的苦痛」「社会的苦痛」「宗教的苦痛」「家族の苦痛」の五項目の軽減を目指して活動している。

 このほか宗教関係の病院では、大阪の淀川キリスト教病院、東京都清瀬市救世軍清瀬病院などもホスピス・ケアを実施しており、仏教関係のホスピスとしては、新潟県長岡市の長岡西病院が開設したビハーラもあげられる。ビハーラとはサンスクリット語で「休養の場所」という意味で、仏教ホスピスを表わす言葉として使われている。ここでは僧がボランティアとして活動し、法話を行なううえ、希望によっては患者のベッドまで出向くのである。

 一方、国公立関係では国立がんセンター東病院と、富山県立中央病院、川崎市立井田病院など二〇を超える施設がホスピス病棟を開設している。

 従来、ホスピス・ケアは保険医療として認められておらず、これが普及を阻む一つの原因になっていた。そこで厚生省(現厚生労働省)は一九八七年に、「末期医療に関するケアのあり方の検討会」を設置し、八九年に提出された報告書の内容に沿って、九〇年四月の診療報酬改定時に、ホスピス・ケアを診療報酬のなかに組み入れたのである。これでホスピスの経営内容は若干よくなったが、まだ収支を賄うところまでいっていないのが現状である。

 最近ではガンの疼痛に対する薬物療法が進歩し、在宅医療も可能になってきた。しかし、精神的な苦痛や社会的苦痛への対応はいまのところ打つ手がなく、患者への病名告知とともに、今後のホスピス・ケアの問題点として残されている。

【ペインクリニック】ガン、神経痛などの各種の痛みを除く診療科。麻酔剤を神経に注射して痛みを止める神経ブロック、脊髄の後根を切断するリソトミー、八リなどの方法がある。