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局方品について

「局方品」とは「日本薬局方」に収載されている医薬品をいう。では薬局方とはなんだろうか。

 一八八〇(明治一三)年、当時国内の治安、公衆衛生などのすべてを取り仕切っていた内務卿(その後の内務大臣)松方正義によって内閣に提出された書類が、日本薬局方制定のもとになっている。

 この松方の書類には、当時の医薬品販売の状況がよくみえる。明治の文章でわかりにくいから、簡単に大筋を記すと次のようになる。

 「日本にはまだ薬局方がなく、薬に一定の基準がない。このため英国薬局方の薬の量で、ドイツ薬局方の薬を投薬するような、危険な間違いを犯しやすい。また、製造業者は各国それぞれの薬局方によって薬を製造するので、名前は同じで中身が違ったり、中身が同じで名前の違うものが市中に出回っている。輸入医薬品の検査も基準がないから、特別の試験をしなければならない。加えて基準がないから、業者は安い原料を選んで薬をつくる。こうした弊害の防止に、薬局方の制定が必要である」

 要するに基準となる薬を選び、その規格、試験法を決めてインチキ薬を防ぎ、国民の健康を守ろうというのである。

 こうして当時の医・薬の権威が集まってできたのが第一版日本薬局方で、一八八七年に施行された世界で二一番目の薬局方である。八八年には第二版薬局方が発行され、その後、おおよそ一〇年の間隔で改正されている。これは、医・薬の進歩のためである。

 医・薬の進歩にともなって新しい薬はドンドンできる。しかし、このうち薬局方に収載されるのは、治療の基準になるような評価の定まったものだけである。薬局方に載っていないものを、通常「新薬」というが、最近では新薬が数多く発売されるため、市中に出回っている医薬品は新薬のほうが多い。このため薬局方の改正も五年間隔に改められている。

 局方品には比較的新しいものもあるが、重曹や単シロップ、アスピリンなどのように、古くから使われているものが多い。この古くからある薬品を主に製造するメーカーを「局方品メーカー」という。大日本製薬(現大日本住友製薬)、鳥居薬品なども局方品メーカーから出発し、新薬メーカーへと転身していった企業である。

 現在、局方品メーカーといわれる会社は、丸石製薬、吉田製薬、メルク製薬、シオエ製薬などである。また、局方品は概して薬価が安いうえに、健康保険の薬価基準では、各社の製品をひとまとめにして一般名、同一薬価で収載してあり、どの製品を使ってもよいことになっている。このため、自社製品の薬局方収載を喜ばないメーカーもある。

【薬局方の編纂】薬事・食品衛生審議会には多くの部会があり、そのうちの日本薬局方部会で5年に1回改正される。医・薬の専門家が委員となって編纂に当たる。