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ロシュ社の巧みなM&A手法

 買収事例として、ここではジェネンテックと中外製薬の2社の事例を取り上げる。

 ジェネンテックは、バイオ医薬領域における世界初のバイオベンチャーである。ジェネンテックのM&Aにおけるポイントは2つある。ひとつは、どの企業からも汁日されていないきわめていい吋川に同社を見つけたことである。もうひとつは、段階を経て慎重にM&Aを行ったことである。

 では、どのような段階を経たのか、具体的な流れを見ていこう。ロシュは、まず1978年にジェネンテックと共同研究プロジェクトに着手した。その後、90年に株式の55・8%を取得して子会社化、2009年に完全子会社化を達成した(注玉。このように、ロシュはきわめて長いスパンで、段階を経ながら慎重にM&Aを進めていった。

 中外製薬M&Aについても、ポイントは2つある。ひとつは、ロシュがかねてから強化したいと考えていた日本市場において、同市場のバイオ医薬領域でトップクラスの研究を展開していた中外製薬を見出したことである。もうひとつは、中外製薬に対して相当の自主性を認めたことである。口シュは、中外製薬に対して独立性のある研究開発体制を提供した。同社の日本法人である日本ロシュと中外製薬の経営統合を実施し、日本市場の統括者としての責任あるポストを中外製薬に提供したのである。

 この2つの事例に共通するポイントは、「M&Aの着眼点」「M&Aの進め方」の2つである。

 M&Aの着眼点においては、バイオ医薬領域の世界的な先進的企業、注目市場でのバイオ医薬先進企業を見つけるという着眼点のすばらしさを垣間見ることができる。

 M&Aの進め方においては、被買収企業に対して徐々に歩み寄りを見せる柔軟な姿勢、被買収企業の尊厳を認める姿勢を評価することができる。被買収企業とほどよい距離感を保ちながら徐々に歩み寄っていくことで、優れた人材の流出を防ぎ、新薬候補となるシースや創薬技術を手に入れるととも点、そして巧みなM&Aの進め方により、被買収企業との統合を円滑化し、買収によるシナジーを最大化することが可能となった。こうした巧みなM&A活用術によって、研究開発の難しいアンメット・メディカル・ニーズ領域内で確たる地位を築く基盤を整えたのである。